「涙がとまらない、だれとも会いたくない…」息子が重度の難聴とわかり、産後うつに。同じように悩む人を元気づけ、支え合いたい【体験談】
難聴があっても手話を使わない人もいると知ってほしい
糸優くんはこの春からお姉ちゃんの咲花(えみか)ちゃん(6歳)と同じ幼稚園の2歳児クラスに通い始めました。 「これまで私立のろう学校の乳幼児部に通っていましたが、私が職場復帰するために保育園を考えました。いろいろ探したのですが保育園の空きがなく、さらに人工内耳を装用していることを伝えると断られてしまうことも多かったんです。お姉ちゃんの幼稚園では難聴児を受け入れたことがなかったので、最初は難しいかも…と言われていたのですが、幼稚園と何度も話し合い、今年の5月から入園することができました。今ではお友だちもたくさんできて、とても楽しく通っています。今後は公立のろう学校と今の幼稚園を併用して通うことを予定しています。息子にとって、いちばんいい環境はなにかを常に考えています」(美砂江さん) 一般的に難聴や聴覚障害がある人、と聞くと手話でのコミュニケーションをイメージする人が多いでしょう。しかし、美砂江さんは「難聴者のなかにも言葉をきいて話す人がいることを知ってほしい」と言います。 「私も息子が生まれるまでは、人工内耳というものがあることを知りませんでした。最近では、補聴機器や医療の進歩によってきいて話せる難聴児、難聴者が増えていると思います。しかし、どんなに人工内耳や補聴器が発展してもきこえる私たちのような『きこえ』にはなりません。 人工内耳を装用していても、騒音下だったり、大人数の場ではきき取りにくくなります。息子がおしゃべりしていると『ちゃんときこえているんだね!』と言われることもあるのですが、人工内耳を装用して音声言語のやり取りが可能になっても、きき取りづらさはあると言うことも知ってほしいなと思います」(美砂江さん) 人工内耳手術をしてから、療育や自宅できこえとことばの力を伸ばす練習をしてきた糸優くん。今は日常会話はほぼ音声言語で成り立つまでに成長しました。 「息子は今では飛行機の音がきこえると空を見上げ、鳥のさえずりがきこえると木々を見渡すようになりました。3歳になっておしゃべりも上手になってきました。 人工内耳手術をするかどうか、夫と一緒にすごくすごく悩みました。でも今、音の世界を楽しんでいる息子の姿を見ると、この選択をしてよかったなと親の私たちは思っています。ただ、息子にとってよかったかどうかは息子が大きくなって自分自身のきこえをどうとらえるか、どんなふうに感じているのかを聞くまではわからないなぁと思っています」(美砂江さん) お話・写真提供/美砂江さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部 ピアサポートコミュニティ『Lelien(ルリアン)』の参加者からは、「弱音をはける場所があって助かる」「ほかのみんなも頑張っていると思うと励まされる」と感想が寄せられているそうです。「“難聴児育児あるある”などの何気ない話題で笑い合って、育児をもっと楽しんでほしい」と美砂江さんは言います。 ■Lelien(ルリアン) https://lelien2024.studio.site/ ■Lelien(ルリアン)のInstagram https://www.instagram.com/lelien2024.mm/ 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。 ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
たまひよ ONLINE編集部