耳をふさがないイヤフォン、NTT子会社「nwm」も5000円以下で挑戦 密閉型のデメリット解消を目指す
「耳をふさぐイヤフォン」が生む弊害とは? NTTソノリティのnwm、2025年春には「ネックバンド型の防水イヤフォン」
イヤフォンやヘッドフォンと聞いて、音楽を聴いたり、動画を視聴したり……といったシーンを想起する人は多いのではないだろうか? ところが、コロナ禍にオンライン会議が普及し、家事や仕事の合間に会議にオンライン会議に参加する、いわゆる“ながら需要”が広まり、イヤフォンやヘッドフォンの利用場面は多様化した。 そんな中、ソニーが耳をふさがないイヤフォンとして、ドーナツのように穴のある「LinkBuds(リンクバッズ)」を2022年2月25日に発売。JVCケンウッドも同年6月にVictor(ビクター)ブランドからnearphonesシリーズ第1弾として、イヤーフックを耳にかけて使う「HA‐NP35T」を発売。オープンイヤー型はBoseやファーウェイも手を出したが、どちらもイヤーカフ型で勝負している。 NTTソノリティのnwm新製品も、いわば耳をふさがないイヤフォンの波に乗ったような製品といえるが、イヤーカフ型でもドーナツ型でもなく、イヤーフック型に近い。NTTソノリティは2024年1月にnwmの製品と、スマートフォン/タブレット向けのアプリ「BONX WORK」を組み合わせた、次世代トランシーバーサービスを発表し、法人に売り込んでいた他、7月18日には耳をふさがないヘッドフォン「nwm ONE(ヌーム ワン)」を発売した。 今回発売のnwm DOTSとnwm WIREDは個人の利用場面にフォーカス。NTTソノリティは法人用途での利用シーンやサービスの組み込みを一切示さなかった。特にイヤフォンのワイヤレス化にあえて逆行し、税込みでも5000円を切るnwm WIREDを打ち出したところは興味深い。2モデルの市場への投入理由は何だろうか。 坂井氏は「リモートワークや移動中にイヤフォン、ヘッドフォンの利用が増える一方で、新しい課題が見えてきた」と明かし、密閉型のイヤフォンにより「家庭やレストランなど、屋内外を問わず、コミュニケーションに弊害が出ている」と指摘する。 NTTソノリティが10月、ヘッドフォンを利用する500人を対象に実施したイヤフォン/ヘッドフォンの課題に関する調査では全体のうちの約半数以上がイヤフォン/ヘッドフォンにより耳がふさがれて困った経験があると回答した。 イヤフォンやヘッドフォンの着用時に周囲からの呼びかけに気付かなかった経験はあるか? という問いに対し、全体のうちの60.6%が「よくある」「たまにある」と回答。イヤフォンやヘッドフォンの着用により呼びかけた人に無視された経験はあるか? という問いには50.4%が「よくある」「たまにある」と回答。 イヤフォンやヘッドフォンの着用により、歩行中に車両の接近やクラクションに気付かず危険を感じた経験はあるか? という問には30.8%が「よくある」「たまにある」と回答した。 ヤフー・データソリューション「DS.INSIGHT」によると、オープンイヤーの検索数は「2020年から徐々に高まり、2024年は飛躍的に伸びた」(坂井氏)そうだ。2019年と2024年を比較すると、「検索数は約7倍も増加」(坂井氏)している。 BCNのランキングデータサービスのヘッドセットカテゴリーをもとにNTTソノリティが集計したデータによると、オープンイヤー型のワイヤレスイヤフォンは2022年から2023年にかけて+10%成長、2024年にかけては+50%成長する見込みだ。 IDCの調査によると、中国で2024年上半期に出荷されたオープンイヤー製品の台数は2023年上半期と比較して303%増加した。なお、タイプ別に見ると、耳に掛けるタイプが前年比で1015%、耳を挟むタイプが522%増加した。 坂井氏はこれらのデータを踏まえ、「オープンイヤーの数字は非オープンイヤーの数字と比較すると、まだ10分の1程度にとどまるが、今後、個々のユーザーのライフスタイルやライフステージに合わせたさまざまな機能や価格帯の製品が拡充することで、大きな市場拡大が期待できる」とした。さらに、密閉型のイヤフォンが生む弊害の解決に向け、nwmでオープンイヤーの間口を広げたいとの考えを示す。 NTTソノリティは今後、成長が見込まれるオープンイヤー型のワイヤレスイヤフォンに「さらなる投資を行う」(坂井氏)考えで、2025年春には雨や蒸れを気にせずに使用できる防水性能を持つ、ネックバンドかつオープンイヤータイプのワイヤレスイヤフォンを発売する予定だ。
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