【追悼】ハーブ研究家・ベニシアさんが人生と遺した言葉たち――人生に嵐が訪れたときは
80歳になったら叶えたい、ささやかな夢
今、私は63歳。今年に入って体の不調が続き、一時的に花の名前が思い出せなくなったことがありました。そのときに思ったんです。「メモリー(私の中の記憶)はいつ終わるかわからない」と。そんな心配をする年になったんですね(笑) だから、今のうちに記録を残しておこうと思い、ブログに私の半生を綴り始めました。この記録は、いつか孫たちが自分のルーツに興味がわくようになったときに役立つはず。記録は次代への最高のプレゼントだと思います。 私にとって、ここ大原はやっと見つけた幸せの場所です。何があってもここを離れたくない。80歳になったらここでオープンガーデンをするのが夢です。ゆっくり呼吸して、時にはぼーっとして花を見て、空を見て。せっかく美しい地球に生まれたから、そういう時間も大切にしたいんです。 私たちの悪い癖は、どうでもいいことを考えてしまうことだと思いませんか。頭の中でもう一人の自分が「もっとこうしたらよかった」とか余計なことをしゃべるんです。でも夢中になれることがあると、そういうものから解放される。 刺繍でも料理でも何でもいいんです。私にとってそれが庭なんですね。つらいことがあったら庭に出ます。一度庭に出たら花と向き合う時間に夢中になれる。 夢中になると「楽しい」と感じるプレゼントがもらえるんです。そのプレゼントをもらって使って生きていくことが、すごくいいなって私は思うの。私には人生を楽しくしてくれる庭があってよかった。今、心からそう思います。 取材・文=小林美香(ハルメク編集部) 撮影=梶山正 ※統合失調症とは幻覚や妄想、行動障害などの症状がある精神疾患。発症の原因は不明で、日本にはおよそ79万5000人の患者がいると推測されています。(厚生労働省ホームページより) この記事は、雑誌「いきいき(現ハルメク)」2013年11月号を再編集しています。
雑誌「ハルメク」