ジュビロ遠藤保仁が移籍後初対戦となった古巣ガンバを震え上がらせた”凄み”とは?「スペースと時間を与えるな」と敵将警戒も
「僕の役割は守備と攻撃のつなぎ役なので、自分が一番になりたいとも思わない。ただ、目立つ、目立たないは別にして、チームにとって絶対に必要な選手にはなりたい」 出場機会を求めて2020年10月にガンバから期限付き移籍で加入し、今シーズンからは完全移籍に切り替えた磐田でも、必要不可欠な存在になって久しい。 1年目こそ自身が加わる前の取りこぼしを挽回できず、J1復帰を逃した。一転して開幕前のキャンプから時間を与えられた昨シーズンは、J2リーグ戦で最多の総得点「75」を叩き出し、リーグ優勝を果たした磐田の中心で攻撃のタクトを振るい続けた。 遠藤が貫き通した矜恃は、現代サッカーに対するアンチテーゼでもある。 「ハードワークやフィジカルが重視される世の中になっているけど、試合に変化を与えられる選手は見ていて美しいと僕自身はずっと思ってきたので」 1対1の勝負は極力挑まない。味方との何気ないパス交換の繰り返しにも、ボールを回し続ける展開にこそ意味があると胸を張る。そして、すべてのプレーでシンプルを心がける。黒子に徹しながら、わずか1年半で磐田のカラーを変えた。 今シーズンからガンバのキャプテンを務める倉田にとって、国内三冠を独占した2014シーズンを含めて長く中盤で共演した遠藤と敵味方で対峙するのは、セレッソ大阪へ期限付き移籍していた2011シーズン以来、11年ぶりだった。 敵となった遠藤を問われると、抱き続ける憧憬の思いを言葉に変えた。 「やっぱり上手いですね。上手いというか、イヤらしいというか、独特な間合いでボールを持たれるので、飛び込めへん、という久々の感覚を味わわされました」 期限付き移籍する場合には、保有権を持つチームとのすべての公式戦に出場しない、という契約を交わすケースが少なくない。しかし、遠藤の場合は3シーズンぶりにJ1へ復帰する磐田への完全移籍が昨年末に発表された。 敵味方になって戦う光景を承知した上での決断。ガンバの公式ウェブサイト上で、遠藤は古巣へ感謝の言葉を綴りながら再会を約束している。 「めちゃくちゃ楽しい時間を過ごすことができました。これからもガンバ大阪のさらなる発展を期待しております。(中略)またお会いしましょう」 最初の再会を果たした敵地に駆けつけたガンバのファン・サポーターからは、先発メンバー発表で「遠藤」の番になると、ひときわ大きな拍手が起こった。 そして、開幕から4試合連続でボランチとして先発した遠藤は後半34分までプレー。もうひとつの古巣である京都を4-1で一蹴した前節に続く、今シーズン2勝目をベンチから託していた終了直前に、意地を見せたガンバに追いつかれた。 リーグ戦での次なる再会、すなわち慣れ親しんだパナソニックスタジアム吹田へ乗り込むのは、最終第34節のひとつ前の10月29日。J1の舞台で戦いながら、そのときには磐田をどのような位置に導いているのか。MF小野伸二(42、北海道コンサドーレ札幌)に次ぐ、今シーズンのJ1で2番目の年長プレイヤーのチャレンジは続く。 (文責・藤江直人/スポーツライター)