ジュビロ遠藤保仁が移籍後初対戦となった古巣ガンバを震え上がらせた”凄み”とは?「スペースと時間を与えるな」と敵将警戒も
まずはガンバのMF山本悠樹(24)が自陣左サイドの中央で、至近距離にいた磐田のMF松本昌也(27)のほぼ正面にパスを出す痛恨のミスを犯した。まさかの展開に松本もマイボールにできず、後方に弾んでいったこぼれ球を必死に追いかけた。 次の瞬間、右手を介して松本に“待った”をかけ、右足のスパイクの裏でボールを止めたのが、センターサークル付近に下がっていた遠藤だった。 顔を上げた遠藤は状況を確認し、すかさず前方のDF鈴木雄斗(28)へ縦パスを通した。攻撃に移りかかっていたガンバの対応が遅れ、後手を踏んでいくなかで鈴木からFW杉本健勇(29)、そして再び鈴木へとテンポよく短いパスが回っていく。 そして、鈴木がワンタッチで放った横パスを杉本がスルーする。ガンバの選手たちはまったく反応できない。左サイドからペナルティーアーク付近へ、フリーで走り込んできた大森が狙いを定めて右足を振り抜き、ゴール右隅を正確に射抜いた。 ガンバの下部組織で育ち、ガンバでプロデビューを果たした大森がFC東京時代の2019シーズン以来、3年ぶりとなるJ1でのゴールを満足そうに振り返った。 「雄斗(鈴木)からいい形でボールが来たのと、あとは前方の守備陣があまりプレッシャーに来ていなかったので、コースも見えていたなかで流し込むだけでした」 足裏を駆使した遠藤のトラップから、大森がゴールネットを揺らすまでに要した時間はわずか6秒。しかし、試合後にJリーグが発行する公式記録の得点経過欄には、磐田の先制点に関しては杉本と鈴木、そして大森の背番号が記されていただけだった。 瞬時にガンバの守備陣形を確認し、攻守を逆転させるきっかけとなる素早い縦パスを放った遠藤の背番号「50」は見当たらない。コロナ禍で実施されてきた、両チームから2人ずつが対応する試合後のオンライン取材にも選ばれなかった。 もっとも「黒子」や「いぶし銀」という言葉で形容される存在感は、遠藤自身が望むものでもあった。歴代最多の「152」のキャップ数を誇る日本代表にも通じる自身の存在価値を、遠藤は「目立ちたいとは思っていない」と語ったことがある。