人手不足の時代、「困った社員」にどう対応する?
産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
精神科産業医として45年以上のキャリアを持つ夏目誠さんが、これまで経験してきたケースを基に、ストレスへの気づきとさまざまな対処法を紹介します。 【図表】うつ病にならないためにやめておきたい七つのこと
仕事への姿勢は人それぞれで、サラリーマンと言ってもいろいろな社員がいます。中には、遅刻、無断欠勤を繰り返すといった行動に問題がある「困った社員」もいます。「精神的な病でもあるんじゃないか」と私のような産業医でもある精神科医に紹介されてくることも時々ありますが、病ではなく、性格と言った方がいいケースも。そのような困った社員を紹介します。
規律の欠如を悪いと思っていない
私に紹介されてきたのは社員80人の会社で営業マンとして勤務する38歳の桑田啓介さん(仮名)。最初に対応したこの会社の産業医(内科)からの申し送りによると、次のような経緯のある方でした。 営業成績が良かったり悪かったり波が大きく、無断欠勤が月に2回くらい、遅刻も週に1、2回あるからということで、上司の部長が注意をしても、馬耳東風のようで翌日から出勤しないこともあったようです。 しっかり話を聞こうと面談しても、「仕事はしていますよ。無断で休んだり、遅刻したりするのは学校時代からです」「叱責されるくらいなら辞表を書きます」と抗議口調で話す有りさま。部長が、「営業の成績は評価しているよ。他の社員の手前もあるから、無断欠勤や遅刻を減らしてほしいだけ」と言うと、「少し時間をください」。そこで部長は彼に「心身の病気もあるかもしれないから産業医の先生に相談したらどうか」と面談を勧めました。 内科が専門の産業医も対応に困ったようで、「病気の可能性も含め対応をよろしく」と、私に紹介してきたわけです。産業医ではなく、精神科の主治医として桑田さんに向き合うことになりました。
夜遅くまで遊んでいることが欠勤理由
主治医 : 無断欠勤があるようですね。 桑田さん: 月に2回くらいですね。 主治医 : どうしてですか? 桑田さん: 起きるのが遅くなると、出勤するかどうか迷うんです。家を出て会社に行く気になれば出勤します。そう思わない時は、そのままパチンコや映画に行くこともあります。 主治医 : 起床時間が一定ではないんですか? 桑田さん: 仲間でレクリエーションをする「仲間レク」と言っていますが、ネットで知り合った仲間と、オンラインで遊んでいるんですよ。それなりの時間に終われば寝ますが、熱中すると、午前1時とか3時になることもあって、そうなると会社に間に合わないこともありますね。 主治医 : 遊んでも、仕事に支障が出ないようにしないとね。遅刻は? 桑田さん: 週に2回くらいか。 主治医 : 多いですね。 桑田さん: 営業ですから、結果さえ出せば良いでしょ。 主治医 : 成績はどう? 桑田さん: 30人が営業ですが、15番前後です。良い時は5位になります。そう言われれば波はありますね。