先端半導体向けEUV露光装置の大幅な省エネ実現 沖縄科技大
すると、光源からフォトマスクまでは2枚、フォトマスクからウエハーまでは2枚の鏡で収めることに成功した。消費電力も100キロワットと従来の10分の1まで抑える省エネ性能だった。なお、EUV光源では、スズの液滴を炭酸ガスレーザーで加熱して、プラズマを作り、EUV光を発生させているが、残ったスズ液滴がデブリとしてあらゆる方向に飛散し、マスクやプロジェクター、ウエハーに混入するという問題もあった。
今回発表した技術は、EUV光のパワーが非常に低いため、新竹教授は光源の近くにデブリを除去するための透明なフィルターを入れることを可能にした。これにより、プロジェクター側にきれいな真空の空間を確保出来る。
また、回路パターンを描いたフォトマスクに光を当てる際に、従来のように入射角と反射角が同じようになる1本の光ではなく、2方向から光を当ててより光が透過するように工夫した。新竹教授の手法では、露光面積を20ミリメートル四方まで大きくすることができ、携帯電話のチップやメモリの生産にそのまま用いることができるという。
国内では半導体検査装置で小電力のEUV光源が用いられているケースはあるが、露光装置ではまだ使われていない。新竹教授は「国産化できると思う。日本の半導体メーカーが再び黄金期を迎えられればいい」と展望を語る。今後は研究と並行して産学連携で光学機器メーカーや半導体メーカーに実用化の協力を仰ぎ、これまで日本が得意としていた半導体製造技術の巻き返しを図りたいという。社会実装できれば、世界中の半導体メーカーに販売でき、現在の一社独占市場を切り崩すことができると考えている。
EUV露光装置の市場は2024年の1兆3000億円から、6年後の2030年には2兆5000億円に成長する見込み。今回の成果はすでに特許の出願を終了し、今年4月に開かれた国際会議「フォトマスクジャパン2024」で発表した。