虫歯予防で認知症リスクも減/医療ジャーナリスト・安達純子
~新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防18 認知症の原因のひとつに血管性認知症ある。脳卒中のように血管が詰まったり、破れたりして血流が悪くなって脳の神経細胞が死滅し認知症に至る。 中でも、高血圧や糖尿病などの生活習慣病によって起こしやすいのが脳出血だ。比較的若い年齢でも発症し、認知症のリスクも上げる。そんな脳出血に、虫歯菌のミュータンス菌が関わることが、国立循環器病研究センター脳神経内科の猪原匡史部長らの研究で明らかになった。 「当センターに脳卒中で入院した患者さんの同意を得て調べたところ、歯垢(しこう)から悪玉の虫歯菌・ミュータンス菌が検出された患者さんは、そうでない患者さんと比較して、微小脳出血の出現率が4・7倍も高かったのです」 こう話す猪原部長によれば、虫歯菌のミュータンス菌の遺伝子が変異した悪玉虫歯菌(cnm陽性ミュータンス菌)は、微小脳出血のリスクを上げ、微小脳出血があると脳出血のリスクが10~50倍も高くなるという。もちろん、微小脳出血は認知症も助長する。 「虫歯菌は歯のエナメル質のような硬い部分に結合して、虫歯を引き起こします。しかし、cnm陽性ミュータンス菌はコラーゲンにも結合できるため、血液に乗って脳の血管に到達し、微小血管に悪影響を及ぼすと考えられます」 一方、歯周病も認知症のリスクを上げると報告されている。いずれにしても、オーラルケアは大切だ。口の健康が認知症予防にもつながる。