AIライティングアシスタント「Catchy」を開発。デジタルレシピ代表 伊藤新之介インタビュー
次のステップは「AIによる災害・人命救助」
──これまで、難しい難局に直面したことはありますか? 「Catchy」を開発するときに、それまでの「受託的なマインド」から「プロダクト開発のマインド」に切り替えるのにとても苦労しました。 以前は、良くも悪くもクライアントの反応を見ながら提案内容を決める必要があり、ある程度、無難な案も用意しながら進めていました。 しかし、プロダクトをつくるときは、何がなんでもヒットを狙いにいかなければならない。無難なものでは誰にも注目されないんです。「Catchy」をつくっていたとき、そんな「妥当な線を用意する」思考に囚われ、プロジェクトが停滞してしまいました。 自分が変わるきっかけになったのは、投資家に自社サービスのプレゼンテーションを行なうピッチイベントへの参加でした。 ピッチイベントでは、数ある参加企業の中でもっとも目立たなければならないのに、自分は周囲の人に合わせたピッチをしようとしていました。しかし、ほかの参加者を見ているうちに、ふと思ったのです。「なぜ自分は無難に済ませようとしているのか」と。 あのイベントのおかげで自分を客観視できて、成果が出ない原因にも気づけたと思います。プロダクトの開発中にはまだ顧客はいませんよね。なのに、なぜか仮想のクライアント(笑)に向けて、リスクを回避しながら進めようとしていたんですよね。 このままではダメだと思い、気合を入れなおして、登録不要で使えるトライアル版「Catchy」をつくりました(現在はサービス終了)。反省の意味も込めて、数年ぶりに自分でコードを書いて…。すると、3日で50万PV以上の反応があり、サーバーがパンクしてしまった(笑)。 「プロダクト開発に必要なのは、この感覚だったのか!」 と、目が覚めた瞬間でした。 ──最後に、伊藤さんが目指すゴールを教えてください。 最終目標は「ドラえもん」をつくることです。 ドラえもんがポケットから出すアイテムは、ボタンを押すだけで困り事を解決し、時には人の命も助けてくれる。そういうサービスやプロダクトをつくりたいという思いがあります。 実現したいテーマは、AIを使った災害救助・支援。 日本は、関東大震災をきっかけに自動車が一般化しましたし、東日本大震災でTwitter(現:X)やLINEなどの情報網が浸透しました。日本全体が本当にAIを受け入れるのは、AIが人命救助に使われるときではないかと感じています。