オーバーウルフの広告戦略。 ゲーム内広告 で業界最大級のアドネットワークに成長
記事のポイント オーバーウルフは主要ブランドとの取引で年間広告売上5000万ドルを達成。 ゲーム改造プラットフォームを活用し、直接的なゲーム内広告でブランドセーフティを確保。 Twitchを補完する独自の広告戦略で、ユニークなオーディエンスにリーチ。 マーケターがゲーマーにリーチする多様な方法について知恵を絞るなか、ゲーム会社オーバーウルフ(Overwolf)は、自社が所有・運営するゲームプロパティに注力し、同社を業界最大級のアドネットワークに成長させた。 オーバーウルフは、ゲーム開発者向けのソフトウェアプラットフォームとして2010年に設立された。その後、ゲーム改造プラットフォームのカースフォージ(CurseForge)、ゲーム内決済サービスのテベックス(Tebex)、ゲーム広告技術のニトロ(Nitro)など、さまざまな有名ゲームプラットフォームをポートフォリオに持つ持株会社へと発展した。オーバーウルフは2024年、ユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures)、日産自動車、電通、ハバス(Havas)などのブランドやエージェンシーが同社のゲームインベントリー(在庫)を購入したことを受け、約5000万ドル(約76億6000万円)の広告売上を計上した。 オーバーウルフの成長はこの1年も続いている。2024年8月にコムスコア(Comscore)が発表したデータによると、同社は、アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)やエピックゲームズ(Epic Games)などの競合プラットフォームを抜き、米国で4番目にアクセス数の多いゲームプロパティとなった。同社が米DIGIDAYに提供したデータによると、オーバーウルフの月間ユニークユーザー数は現在1億人を超えており、前年比で2倍以上の数のオーディエンスを獲得している。 オーバーウルフの広告事業拡大の秘密は、同社が所有するオリジナルの知的財産(IP)ポートフォリオにある。Twitch (ツイッチ)やロブロックス(Roblox)のようなほかのゲームコミュニティプラットフォームがよく行っているように、インフルエンサーやクリエイターにコンテンツを供給してもらう代わりに、オーバーウルフは、ゲーム改造プラットフォームを使って、ゲーム画面上に直接広告をオーバーレイし、さらに、ゲームのロードを待つあいだにプレイヤーに広告を提供する。 たとえば2024年6月、ハズブロ(Hasbro)はカースフォージと提携し、「パワーレンジャー(Power Rangers)」をアクションアドベンチャーゲーム「アーク:サバイバル・アセンデッド(Ark: Survival Ascended)」に組み込んだ。このコンテンツにアクセスするには、プレイヤーはカースフォージ経由でゲーム用のMOD(改造データ)パックをダウンロードでき、これを使用するとパワーレンジャーのキャラクターやアセットが「アーク」内に直接配置される。 「Steam(スチーム)上でのトップ25に入るゲームであり、ゲームをプレイし続け、新しい高品質なコンテンツを求めてやまないファン層を取り込むことができたゲームのひとつだ」と、オーバーウルフの最高経営責任者(CEO)ウリ・マーチャンド氏は語る。「我々が(ハズブロに)コンタクトしたとき、規模的には『フォートナイト(Fortnite)』には及ばないかもしれないが、このゲームをプレイしているほぼすべてのコミュニティが露出される可能性は十分にある」と述べた。