親知らずの抜歯【口腔外科を知る】
◇実際の抜歯
では、実際の抜歯についてお話しします。 真っすぐにしっかり生えていれば比較的抜歯しやすいです。通常、全部の親知らずがあれば、上下左右の4本です。上顎の場合は多少位置がずれていても比較的容易に抜歯は可能ですが、下顎で斜めになっている場合は歯を砕くことが必要で、難しい対応となります。 歯茎や顎の骨の中に埋まっているケースもあります。この場合は歯茎を切開したり、顎の骨を削ったりすることも少なくありません。手術による負担が大きければ、術後の炎症症状(顎の腫れ、痛み、開口困難、のどの痛みなど)は強くなります。 さらに、下顎の親知らずは根尖(歯の根の先)が骨の中の神経に近い場合もあり、抜歯後の後遺症として下唇周辺や舌のまひやしびれが残ってしまうケースもあります。必ず残るわけではないですが、発生すれば回復に数カ月を要することもあり、まひやしびれがなくならない場合もあります。 以上のように、親知らずへの対応は通常の抜歯に比べリスクを伴うケースも多いのです。気になるようであれば、まずかかりつけの歯科医にご相談いただき、抜くべきかどうかを含め、詳しい説明を聞くようにしてください。抜歯が必要で、非常に難しい治療であれば、専門の医療機関(口腔外科)を紹介されることもあります。 親知らずは、正しく管理すれば必ずしも恐れる必要はありません。しかし、トラブルが起きた際に適切に対処することが重要です。正しい知識を持ち、日々のケアと定期的な歯科検診を通じて健康な口腔環境を維持しましょう。(了)
角田智之(つのだ・ともゆき) 歯科医師・歯科医師臨床研修指導医・日本選択理論心理学会認定選択理論心理士。明海大学卒業後、日本大学医学部歯科口腔外科学教室、久留米大学医学部口腔外科学教室などを経て、2008年に福岡市で「つのだ歯科口腔クリニック」(現在は「つのだデンタルケアクリニック」)を開設した。