自宅は配偶者へ生前に渡すべき? それとも相続時? 贈与税の配偶者控除と相続税の配偶者控除の違いとは?
自分名義の家を、いつかは妻(夫)に渡したい。そのような希望をお持ちの方は、「家は生前に渡しておくべきか、それとも相続時に渡すべきか」と、一度は疑問に思うことでしょう。 夫婦間で家を贈与する場合、一定額を課税上の財産額から控除できる特例があります。一方で相続税にも配偶者控除があるため、税金上どちらが有利か、混乱することも少なくありません。 そこで本記事では、贈与税と相続税の配偶者控除の違いを整理した上で、そのメリットとデメリットについてまとめます。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
贈与、相続時どちらにも配偶者控除がある
「贈与税の配偶者控除」と「相続税の配偶者控除」 どちらも、財産を渡す相手が配偶者であれば一定額まで税額がかからない、という点では同じですが、その内容は大きく異なります。 では、どのような違いがあるのでしょうか。冒頭の課題(「家は生前に渡しておくべきか、それとも相続時に渡すほうがよいのか」)を考える上で大切なことですので、まず、それぞれの内容を見てみましょう。
贈与税の配偶者控除とは
贈与税の配偶者控除とは、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を配偶者に贈与した場合、基礎控除(110万円)に加え、贈与税計算上の財産額から最高2000万円(合計で2110万円)までを控除できる制度です(※1)。 この制度を利用するためには、次の要件を満たす必要があります。 1.夫婦の婚姻期間が20年以上であること(事実婚や内縁は不可)。 2.贈与を受ける配偶者が住むための家、または家を購入するための資金を贈与すること。 3.贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した不動産または贈与を受けた資金で購入した不動産に、贈与を受けた配偶者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。 4.過去にこの制度を利用したことがないこと。 5.贈与税の申告書を税務署に提出すること。 結婚して20年以上の夫婦、かつ住居として使う土地や建物またはその購入のための資金に限られる上、控除額が最高2110万円と、制限が多いように感じるかもしれません。 しかし、この制度を使った場合の贈与税の節税効果は、通常の贈与税の税率(財産の額に応じて10%~55%)を考えると、かなり高いといえるでしょう。なお、この制度は土地・建物の一部を渡す場合でも利用できます。 もし家の価格(路線価)が2110万円を超えている場合は、配偶者と所有権を共有にして贈与税ゼロで贈与することも可能です。