【高血圧の見逃されやすい原因!】原発性アルドステロン症 治療方針決定のための国際標準化への道を開く
高血圧の一因になる原発性アルドステロン症について手術の必要性を判断するための新しい国際標準判定方法を、日本大学医学部 腎臓高血圧内分泌内科の小林洋輝助教を研究代表者とする世界12ヵ国の国際共同研究グループが確立しました*。この研究成果は、原発性アルドステロン症の診断と治療において国際標準化への道を切り開くものです。今回は原発性アルドステロン症という疾患と、今回の研究報告の意義について、小林洋輝先生に詳しく伺いました。 *Assessing Lateralization Index of Adrenal Venous Sampling for Surgical Indication in Primary Aldosteronism. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2024 May 15:dgae336. doi: 10.1210/clinem/dgae336. [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
高血圧の原因として重要な「原発性アルドステロン症」
編集部: はじめに、原発性アルドステロン症という疾患について詳しく教えてください。 小林先生: 原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰分泌されることで高血圧を引き起こす疾患です。アルドステロンは体内の塩分と水分のバランスを保つ役割がありますが、過剰に分泌されると塩分を体内に溜め込むので、高血圧の原因になります。日本国内では約4300万人が高血圧に罹患しているとされ、その3-12%が原発性アルドステロン症が原因であると推計されます。原発性アルドステロン症は、高血圧の原因としては比較的頻度が高い疾患であり、見逃されていることも多いことから、適切に診断し治療することが重要です。 編集部: 原発性アルドステロン症が疑われるのは、どういう人なのでしょうか? 小林先生: 原発性アルドステロン症を疑う上で最も重要なサインは「高血圧」です。40歳未満など、比較的若年での高血圧や内服治療でも改善しにくい高血圧、重症高血圧(150/100 mmHg以上)などでは特に注意が必要です。その他にも血液検査でカリウムと呼ばれる電解質が下がることもあるため、疑うための一助になります。 編集部: 原発性アルドステロン症の診断方法についても教えてください。 小林先生: 血液検査でアルドステロンやレニンと呼ばれるホルモンを測定することで、原発性アルドステロン症の疑いがある患者さんを見つけます。その後に、負荷試験と呼ばれる追加検査をおこなうことで、確定診断します。副腎は左右一対ずつ存在する臓器ですが、原発性アルドステロン症には、両方の副腎から過剰にアルドステロンが分泌される「両側性アルドステロン症」と、片方の副腎からのみ過剰に分泌される「片側性アルドステロン症」の2種類があります。そのため、原発性アルドステロン症と確定診断された後は、どちらのタイプであるかを診断する必要があります。 編集部: 原発性アルドステロン症は片側性と両側性があるとおっしゃっていましたが、診断・治療の違いはあるのでしょうか? 小林先生: 片側性アルドステロン症は、片方の副腎が過剰にアルドステロンを分泌している状態です。この場合、過剰に分泌している副腎を手術で摘出することで、治癒が期待できます。一方、両側性アルドステロン症は、両方の副腎がアルドステロンを過剰に分泌している状態であり、主な治療法は薬物療法(薬の内服)になります。原発性アルドステロン症と確定診断された後は、副腎静脈サンプリングと呼ばれる検査をおこないます。この検査では、左右の副腎静脈のアルドステロン値をそれぞれ測定し、その濃度の比率(Lateralization Index: LI値)をもとに、片側性か両側性アルドステロン症かを判断します。その結果に基づき、手術の必要性を決定します。