103万円の壁にぶち当たる「極貧大学生たちのリアル」
前出のAさんも不満をこぼす。 「僕は実家の所得が低かったので給付型奨学金をもらうことができましたが、給付を受け続けるために授業は欠席できません。3回欠席しただけで給付打ち切りの可能性が出てくるので」 文部科学省が大学設置基準を改正した2007年以降、大学は出席点を重視するようになっている。基本的には3分の2の出席がないと単位を取得できず、奨学金を受けている大学生にはより厳しい出席が求められる。今の大学生は昔に比べて、時間的な余裕もないのだ。 「そんな給付型奨学金も月にもらえるのは6万6000円ですから、月4万円かかる家賃で半分以上が消えます。アルバイトで生活費を賄っていますが、お金がなく高利子の学生ローンを借りたことも。何かやるなら、103万円の壁よりも先に奨学金を拡充してほしいと思いますね」 時間のない大学生は、どうしても高時給なバイトに飛びつかざるをえなくなる。前出のBさんは、生活費を夜職のアルバイトで賄ってきた。 「入学直後はハンバーガーショップで働いていましたが、お金も時間も足りないので2年生からガールズバーで働き始めました。堅い企業でアルバイトをすると、従業員が103万円の壁を超えないように(103万円を12ヵ月で割った)月約8.5万円分までしかシフトを入れさせてもらえないことがあるんですよ。 長期休みに集中して働きたい大学生にとって、それは困るんです。夜職は給料が手渡しなので、103万円の壁を気にしなくて済むのも助かりました」 もちろんこれは脱税に当たる行為だが、一部では給与の手渡しが横行している。しかし、それでも生活が楽になったとまでは思えなかったという。
「地域にもよりますが、ガールズバーはだいたい時給1500円、ラウンジやスナックは2000円から2300円くらい、キャバクラで時給2500円くらいですかね。 制服代とかで引かれるので実際にもらえる額はもっと低いですが、シャンパンの注文が入ったりするとバック(報奨金)があるので、努力次第で大きく稼げる。 ピンサロは時給がたったの1500円くらいなので私は避けましたが、下戸でお酒の席が苦手な友達は、仕方なく働いていました」 早稲田大学に通う4年生女子のCさんは「手渡しのアルバイトは近年、探してもなかなか見つからなくなった」と言う。 「大手求人サイトで『手渡し高収入』などと条件を設定して探すのですが、中には盗品とおぼしきスマホで作業するバイトなど、怪しげな案件も。 私は『レンタルスペースの清掃』という手渡し案件を見つけたので応募したのですが、実際にはオナクラや立ちんぼが使う新宿区歌舞伎町の部屋の掃除で精神的にしんどかったです。 手渡しのバイトを探す限り、そういったグレーな仕事に当たることもあるので、103万円の壁をなくすのには賛成です」 103万円の壁問題の根本は、闇バイトともつながっているのだ。 ■同僚の名義を借りてアルバイト 最後に、働き控えの実態も見てみよう。 就職情報サイトの『マイナビ』が大学生を対象に行なった調査では、回答者の約4割が年収の壁を意識した就業調整をしていた。さらに、約7割の回答者が「年収の壁が撤廃されたら、もっと働きたい」と回答したという。 一方で、早稲田大学に通う2年生男子のDさんは、今年は103万円の壁を超えてもなお働くつもりだと話す。 「今年から喫茶店とバーのバイトをかけ持ちで始めたので、合算すると103万円の壁を超えそうなことに気づかなかったんです。バイト先の都合もあるからシフトを削るわけにもいかず、オーバーしちゃうのは覚悟しています。 今まで確定申告なんてしたことないし、慣れない手続きをしなきゃいけないという負担がしんどい。こういう面倒をなくすためにも、103万円の壁はなくなってほしいですね」