103万円の壁にぶち当たる「極貧大学生たちのリアル」
他方、慶應義塾大学に通う4年生女子のEさんは、103万円の壁をある「裏技」で切り抜けた。 「10月には103万円を超えそうになったので、バイト先のカフェで同僚の名義を使ってシフトに入ることにしました。 同僚は台湾に留学中のためシフトに入れなかったので、都合がいいと思い店長に相談したら、『聞かなかったことにするけど好きにしていいよ』との返答。 給料はその同僚に振り込まれるので、5%を手数料として抜いてもらって、残りを私の口座に振り込んでもらう方法を取りました」 ここまでするケースは少数派だろうから、やはり現制度はかなりの働き控えを引き起こしているとみるべきだろう。 しかし前出のDさんは、103万円という基準値をただ引き上げるだけの政策には疑問も感じるという。 「コロナ禍で授業がオンラインだった時期には、地元の福島に帰って働いていたんですが、時給が低くて103万円は超えなかったんですよね。同じくらい働いていても東京の時給だとすぐに超えてしまうので、気づくのが遅れました。 最低時給や物価が地域によって違うのに、年収の壁が一律なのはおかしいので、時給や物価に連動させてほしいです」 103万円の壁という30年前の遺物で割を食っているのは若者であり、格差を拡大させている。改革は急務だ。 取材・文/茂木響平 写真/時事通信社