【働き損を防ぐ!】来る年金制度変更のポイントは在職老齢年金制度の改正 給料+年金「50万円の壁」引き上げで年金カットを気にせず働けるように
受給額が大きく変わることになる「年金の受け取り方」で悩む人は多い。原則65歳の受給開始年齢を前倒しする「繰り上げ」を選ぶと月0.4%減額され、60歳まで繰り上げると24%も受給額が減る。一方で受給開始年齢を遅らせる「繰り下げ」だと月0.7%の増額となり、70歳まで繰り下げると受給額が42%増える。一度選択すると生涯にわたり変更はできない。
受給額が増えるならと繰り下げを考える人は少なくないが、ファイナンシャルプランナー(FP)の辻本由香氏は「リスクがある」と指摘する。 「70歳の繰り下げ受給を選ぶと額面上は81歳でプラスに転じるとされていますが、実際には税金や社会保険料が増える分、手取り額でプラスになるのはさらに遅くなります。それまでに亡くなるケースが珍しくない。実際、私の父は年金を受け取り始めてまもなく亡くなりました。基本は65歳の受給でいいと思います。 また、現在は再雇用や定年延長などで長く働く時代です。繰り上げ、繰り下げだけでなく、働きながら年金を賢く受け取る方法を考えることも重要です」
在職老齢年金制度が大きく変わる
その鍵を握るのが在職老齢年金制度の改定案だ。まもなく制度が大きく変わる可能性が高い。 「『給料+年金(厚生年金の報酬比例部分)』が月50万円を超えると超過分の半分の年金が支給停止されるのが在職老齢年金の仕組みです。この『50万円の壁』のため働き控えして給料を低く抑える人もいますが、制度変更の議論が進んでおり、月50万円の上限が引き上げられる見込みです。これにより年金カットを気にせず働いて稼げるようになります」(辻本氏) 2025年の年金制度改正に向け、厚労省が社会保障審議会年金部会に提出した資料では、「50万円の壁」を「62万円、または71万円に引き上げる案」「完全廃止してどれだけ稼いでも年金がカットされない案」が提案された。 税理士・社会保険労務士の佐藤正明氏の指摘。 「ある日、『支給額変更通知書』という書類が届いて年金カットに気付くというケースが多い。在職老齢年金制度などで支給額に変更があると、その都度届きますが、その書類をしっかり見ていない人が散見されます。今後は自分の『給料+年金額』を把握して、働き損を防ぐことが重要になってきます」 自分がいくら働き損になったかは支払額変更通知書の裏面を見る必要がある。 「そこの『支給停止額』欄にカットされた額が記載されます。必ずこの欄を確認するようにしましょう」(佐藤氏) 制度の理解を深めて賢く年金を受給したい。 ※週刊ポスト2025年1月3・10日号