〈スリランカで起きた番狂わせ〉経済困窮立て直しで転換図るも、新大統領が心配な理由
Economist誌9月28日号の社説が、9月23日にスリランカの大統領に就任したディサナヤケのマルクス主義のルーツは重大視する必要はないが、問題は、庶民の経済困難救済に必要とされる国際通貨基金(IMF)との支援合意の見直しなど、公約を実現する彼の能力にある、と指摘している。要旨は次の通り。 9月23日にスリランカの大統領に就任したアヌラ・クマーラ・ディサナヤケの政治経歴は警戒を要するように見える。彼の政党であるJVP(人民解放戦線)は、1970年代と80年代に二つの不成功だったが血生臭い蜂起を主導した革命的なマルクス・レーニン主義の運動として出発した。政府とタミル族の内戦の時期に重なるが、反乱と弾圧の中で数万人のスリランカ人が殺害されあるいは消え失せた。 ディサナヤケはこの血まみれの過去から距離を置いている。2014年にJVPの党首となったが、二度目の蜂起の間のJVPによる数千の市民の殺害を詫び、党は二度と武器を手に取ることはないと述べた。 彼は、JVPのイデオロギーをさらに和らげた。JVPは階級闘争と私有財産拒否を否認して、その起源にあるマルクス主義を希薄化してきた。 今年の選挙戦で、ディサナヤケは、宥和的な態度を示し、国の結束を強調し、市場経済に対する支持を表明した。22年に当時の大統領ゴタバヤ・ラジャパクサが大衆の抗議運動で追放されて以来、JVPを中核とする連合は、経済危機とその解決を目指す緊縮政策によって生活水準を破壊された中産階級の広い支持を獲得した。 ディサナヤケを心配する主たる理由は、彼が狂信者だからではなく、彼には政府の経験がほとんどない点である。彼はどうにかして彼を選んだ人々の不興を買うことなく経済を安定的に維持するための痛みを伴う改革を継続しなければならない。それはほとんど不可能な任務である。 ラジャパクサの腐敗し常軌を逸した政権の下で経済は崩壊した。スリランカは22年4月に債務不履行に陥った。3カ月後、大衆がラジャパクサの官邸を襲い、彼は国外に逃亡した。