〈スリランカで起きた番狂わせ〉経済困窮立て直しで転換図るも、新大統領が心配な理由
ディサナヤケは早速議会を解散し、11月14日に議会選挙が予定されている。NPPの議席は3議席に過ぎず、これでは仕事は出来ないので当然の行動であろう。彼の人気がどの程度NPPの議席増に反映されるかが注目されよう。 ディサナヤケのマンデートは明確であるが、約束した変化を実現する彼の能力となると、明確ではない。彼のマルクス主義のルーツはこの社説にあるように重大視する必要のないことのようであるが、問題は政権担当能力である。 彼はIMFとの30億ドルの支援合意を維持するとしつつも、2年にわたる緊縮財政による一般市民の経済的苦境を救済すべく、IMF合意にある条件の緩和を望んでいる。或る程度の手直しは出来るのかも知れないが、彼の支持者が満足出来るかどうか、要はIMFにどこまで譲る用意があるかであろう。
インド、中国、日本との関係
彼は腐敗との戦いにも苦労するであろう。特に、議会選挙でNPPが相当数の議席増を獲得したとしても、過半数は無理で旧来の支配層との連立政権とならざるを得ないとすれば、彼の支持者の失望を買うだけでなく、腐敗との戦いもそれだけ困難を増すであろう。 そして、対外関係がある。JVPには中国共産党と1960年代以来定期的な接触を持ち、また、「インドの拡張主義」に反対して来た過去があるようであるが、最近はインドと中国双方との友好関係を主張している。 2月にディサナヤケはインドを訪問し外相のジャイシャンカルと会談したことがある。7月には日本も訪れた。いずれにせよ、インド、中国、日本とバランスの取れた関係を維持することがスリランカにとって利益であろう。
岡崎研究所