〈スリランカで起きた番狂わせ〉経済困窮立て直しで転換図るも、新大統領が心配な理由
後継のウィクラマシンハはインフレを抑え込み、通貨を安定させ、IMFおよびインドと中国を含む債権国との間で債務再編の合意を達成した。しかし、彼は一般市民の経済の苦痛を癒すことに失敗し、汚職を抑制し反体制派の権利を守ることはほとんど何もしなかった。 ディサナヤケは腐敗の根絶とIMFとの合意の再交渉を約束して選挙戦を戦った。しかし、IMFとの合意を違えれば、スリランカは経済危機に再び転落しかねない。 従って、彼は合意を守る可能性の方が大きい。しかし、それでは彼は約束通り税を下げ福祉支出を増やす余地はほとんどないことになろう。債務返済の額は来年の予算の半分を食うと予想され、経済成長を促進するためのディサナヤケのアイディアははっきりしないままである。 経済的苦痛を緩和することに失敗すれば、ディサナヤケの支持者を怒らせる。JVPを含む彼の左派グループは議会の225議席のうち3議席を持つに過ぎない。彼は議会を解散し、11月に選挙が予定されているが、過半数を勝ち取るとは思われない。 恐らく、脆弱な連立政権となろうが、彼が追放を約束した旧いエスタブリッシュメントの党を含むこともあり得よう。過去の清算を望んでいるスリランカ人は失望させられることにもなろう。ディサナヤケは、大統領として足元がぐらつく状況に置かれている。 * * *
変化を実現できるか
スリランカの伝統的支配層とは無縁のアウトサイダーであるディサナヤケは、JVP(人民解放戦線)を中核とする左派連合NPP(国民の力)を率い、腐敗の根絶、支配層の特権の削減、IMFとの支援合意の条件緩和を約束して選挙戦を戦った。彼の勝利はスリランカ独立以来の番狂わせであり、旧来のエリート政治からの決別と見る向きもある。 彼の得票数は574万0179票で二位のプレマダーサ(SJB(統一人民戦線)の党首で元大統領の子息)の453万902票に明確な差をつけての勝利であった。大差の三位が現職のウィクラマシンハだった。