首都高でトラック運転手が車線をふさぎ、後続車両に暴行か…動画が拡散 いったい何の罪に問われるのか?
●死傷結果が生じた場合は?
今回の動画では死傷者は出ていないようにみられますが、もし往来妨害行為の後、後続車が突っ込んできて事故になり、人が死傷した場合には、どうなるのでしょうか? <往来妨害致死傷罪> 往来妨害行為の後、後続車が突っ込んできて事故になり、人が死傷した場合、往来妨害致死傷罪が成立します。 この場合は傷害罪・傷害致死罪と比べて重い方の罪が成立するため(刑法124条2項)、負傷の場合15年以下の懲役、死亡の場合は3年以上の有期懲役(原則は20年まで、最大30年)となります。 <危険運転致死傷罪> また、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条)の成立も考えられます。そうなれば、ケガの場合は15年以下の懲役、死亡の場合は1年以上の有期懲役(原則は20年まで、最大30年)となります。 以前は、前の車両を強引に停車させた後に、後続の車両による事故が起こっても、危険運転致死傷罪が成立するかどうかに争いがありました。その理由は、当時の危険運転致死傷罪の条文では、停車行為を危険運転として処罰することが難しかったからです。 しかし、家族4人が死傷した、いわゆる「東名あおり運転事故」(2017年)の裁判をきっかけに、危険運転致死傷罪の条文が見直されました。その結果、前の車を停車させて文句をつけている間に、事故が起こって死傷結果が発生したような場合にも、危険運転致死傷罪が成立することが明確になりました。
●結局、どうなる?
往来妨害致死傷罪や、危険運転致死傷罪は、あくまでも人の死傷結果が生じた場合に適用されるものです。本動画では、そのまま男は立ち去っているようにも見えます。その結果、誰も怪我も死亡もしなかった場合には、先に説明したとおり、妨害運転罪、往来妨害罪や暴行罪、器物損壊罪が成立するにとどまるでしょう。 このように多数の犯罪が成立する場合、最終的にどのように処理されるのかはなかなか難しいのですが、妨害運転罪、往来妨害罪、暴行罪、器物損害罪はそれぞれ守っている利益(保護法益といいます)が異なると考えられるため、全て起訴されて有罪判決が出た場合には、併合罪(刑法45条前段)となりそうです。 この場合には、懲役刑はもっとも長い場合で、もっとも重い罪である妨害運転罪の1.5倍(7年6月)ということになります(同法47条)。