第71回マカオGPの基礎知識/車両編:史上初のFRワールドカップを戦うパッケージと予想タイム
11月14~17日にマカオ市街地のギア・サーキットで開催されるマカオGP。第71回目を迎える今年は、史上初めてFIAフォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ(FRワールドカップ)がメインレースとして行われる。 【写真】ジョーダンのF1マシンがデモ走行した2003年第50回マカオGP 本稿では日本チーム、日本人ドライバーも参戦するFRワールドカップの参戦車両に関する基礎知識をお届けする。 * * * * * * フォーミュラ・リージョナル(FR)はFIA国際自動車連盟がジュニア・フォーミュラの改革を進めるなか、各国・各地域のFIA F4シリーズと、F1のサポートレースとして開催されているFIA F3の橋渡しをするカテゴリーとして2018年よりスタートした。2024年は日本、ヨーロッパ、アメリカ、中東、オセアニアでシリーズ戦が繰り広げられており、世界中で約92人のドライバーが参戦している。 現在はイタリアのタトゥースがヨーロッパ選手権、中東選手権、オセアニア選手権に。フランスのリジェが北米選手権に、日本の童夢が日本選手権(FRJ)にシャシーを供給。エンジンは地域によりアルピーヌ、アルファロメオ、トヨタ、ホンダ。タイヤはピレリ、ハンコック、ジーティー、ダンロップが供給しており、同じFRといえど各シリーズはそれぞれのパッケージでシリーズを展開してきた。 そんななか、2024年よりFIA F3に代わりFRがマカオGPのメインレースとして開催されることとなった。FRワールドカップもシリーズ戦同様にワンメイクで行われることとなり、シャシーはタトゥース社の『T-318』、エンジンはアルファロメオ(オートテクニカ・モトーリ)、タイヤはピレリへと統一されることになった。したがって、FRJを戦ってきたTOM’S、TGM Grand Prixは経験のある童夢製シャシーではなく、タトゥース製シャシーを新たに用意し、マカオGPに臨むことになった。 下記の表組を見ていただくと分かるとおり、現行ではタトゥース、アルファロメオ、ピレリというFRワールドカップと完全に同じパッケージで行われているシリーズは存在しない。ただ、本パッケージは2021年シーズンまでフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権(2022年からはアルピーヌが供給)で使用されていたこともあり、やはりヨーロッパ勢に利がありそうだ。 ■2024年フォーミュラ・リージョナル採用パッケージ 地域/シャシー/エンジン/タイヤ 欧州/タトゥース/アルピーヌ/ピレリ 中東/タトゥース/アルファロメオ/ジーティー オセアニア/タトゥース/トヨタ/ピレリ 北米/リジェ/ホンダ/ハンコック 日本/童夢/アルファロメオ/ダンロップ 昨年までのFIA F3によるワールドカップを見てきたレースファンにとって気になるのは、FRがギア・サーキットでどれほどのラップタイムで走るかという点だ。 過去の予選タイムを見てみると、2023年にFIA F3マシン(ダラーラ製シャシー/メカクローム製3.4リッターV6自然吸気/380馬力)がフロント250/575-13、リア290/590-13というピレリタイヤを履いて2分5秒~9秒だった。 同じく2023年に行われたマカオF4レースでは、タトゥース製シャシーにアバルト製1368cc直列4気筒ターボ(180馬力)にフロント180/550-13、リヤ240/570-13のジーティー製タイヤを履いて2分24秒~47秒(107%は2分38秒722)だ。 当然走行当日のコンディションに左右されるとはいえ、FIA F3とFIA-F4の橋渡しをするFRマシン(270馬力)なだけに、2分14秒~16秒あたりのタイムを刻むのではないだろうか。走行初日(11月14日/木曜日)から各車のラップタイムに注目しておきたいところだ。 なお、マカオGPのコースレコードはFIA F3規定で開催された2019年にユーリ・ビップス(ハイテックGP)が記録した2分4秒997となる。再び規定が大きく変わることがない限り、ビップスのタイムがギア・サーキットのコースレコードとして刻まれることになりそうだ。 また、2003年にはマカオGP50回記念イベントとしてラルフ・ファーマンがジョーダン・フォードのF1マシン『EJ13』でデモランを行い、非競技イベントながら1分55秒714をマークしている。今後もし、最新F1マシンがギア・サーキットを走る機会が実現すれば、どれほどのタイムを記録するだろうか。 ギア・サーキットのコースレコード、各カテゴリーのレコードラップ(決勝中のファステストラップ)、そしてフォーミュラ・リージョナル車両、タトゥースT318のスペックシートは下記のとおりだ。 ■マカオGP/ギア・サーキットのコースレコード 2分4秒997(2019年/ユーリ・ビップス/ダラーラF3 2019) 非公式:1分55秒714(2003年/ラルフ・ファーマン/ジョーダンEJ13・フォード) ■参考:マカオGP決勝ファステストラップ記録/編集部調べ FIA F3:2分6秒647(2023年/ルーク・ブラウニング/ダラーラF3 2019) 2輪車:2分23秒616(2010年/スチュワート・イーストン/カワサキ1000cc) ギア・レース:2分27秒009(2014年/ロブ・ハフ/ラーダ・グランタ1.6T/WTCC) マカオGTカップ:2分17秒182(2019年/アール・バンバー/ポルシェ911 GT3 R/FIA GT3 ■フォーミュラ・リージョナル車両/タトゥースT318概要 -/- フロントトラック/1575mm リヤトラック/1530mm ホイールベース/2900mm 全長/4855mm/Max 全幅/1850mm/Max 全高/950mm (基準面から) シャシー/Al/Nomexハニカム複合カーボンファイバーサンドイッチ ホモロゲーション/FIA F3/2019 (Ann.J Art.273) ボディワーク/カーボンファイバー フロントサスペンション/プッシュロッド/ツインダンパー/スプリング リヤサスペンション/プッシュロッド/ツインダンパー/スプリング スプリング/アイバッハ製 36mm ダンパー/コニ製 ブレーキ/ブレンボ製 タイヤ/ピレリ製フロント230/570-13/リア300/590-13 ホイール/OZレーシング製 エンジン/オートテクニカ・モトーリ(アルファロメオ製) エキゾースト/Aros製 電気系/マレリ製 ギヤボックス/6レシオ/サデフSLR82 ギヤシフト/マレリ製電動シャフトアクチュエータ ステアリングホイール/タトゥース&ネクストソリューション社製 バッテリー/DEKA製 安全燃料タンク/PREMIER社 FT-5 シートベルト/サベルト製 消化器/OMP製 ※上記表はタトゥース社T318テクニカルマニュアルをもとに作成 [オートスポーツweb 2024年11月05日]