憂鬱な梅雨も読めば気分も晴れやかに 呼び名や気配の情緒感じる「雨辞典」「雨小説」 書店バックヤードから
空は灰色で、湿気が全身にまとわりつき、歩けば足元がぬれる。今回は何かと憂鬱な気持ちになる「雨」がテーマです。日本語には、季節や心情によって異なるさまざまな雨の呼び名がありました。本を読んで昔の人が雨に感じた風情を知れば、気持ちが少し変わるかも。(司会は文化部、藤井沙織) 【画像】日向理恵子作、吉田尚令絵『雨ふる本屋』の表紙 ◇座談会メンバー 佐々木梓さん(ジュンク堂書店大阪本店)/百々典孝さん(紀伊国屋書店梅田本店)/大橋崇博さん(流泉書房) ■一風変わった雨の「辞典」 藤井 雨にまつわる言葉を解説した本と物語がそれぞれ3冊ずつありますね。佐々木さんの選書はずばり、『雨のことば辞典』(倉嶋厚、原田稔編著/講談社学術文庫)。 佐々木 すごいロングセラーの本で、八重雨(やえあめ)や秋雨(あきさめ)、氷(ひ)雨(さめ)など雨にまつわる千以上の言葉がひたすら載っています。雨を表現する日本語の多さにびっくりします。慣用句の「アリの引っ越しは雨」に「理由はわからない」ときっぱり書いていたり、ゲリラ豪雨の特徴を解説したりしているのも学術文庫っぽい。 藤井 五十音順に載っているのがまさに辞典。でも解説の言い回しがちょっと面白かったりしますね。百々さんの選書も雨にまつわる言葉の本ですが、また印象が違います。 ■日本人の感性に触れる 百々 『雨を、読む。』(佐々木まなび著/芸術新聞社)。季節や時間帯なんかで分けて雨の呼び名を紹介しているんだけど、特に「五感の雨」の章がすごい。雨に匂いや色まで感じるのは、日本人ならではじゃないかな。梅雨の雨音を「梅のつぶやき」とか。こんなことを、昔の人は思ってたんやな。 藤井 浮世絵のようなイラストが、言葉の持つ気配と合いますね。佐々木さんのもう一冊は写真集です。 ■写真に感じる雨の「色」 佐々木 『四季彩図鑑 雨と風と光の名前』(北山建穂著/みらいパブリッシング)。さっきの辞典にも出てきたいろいろな雨の呼び名と、その雨を撮った風景写真が載っているので、読みやすいかなと。 藤井 雨って、こんなに美しいんですね。