【5大商社・中間決算】三菱商事が成長資金確保、住友商事は見通しに不透明感か… 半期決算で見えた課題
【伊藤忠商事】ファミマが好調、事業ごとの業績にはばらつきも
伊藤忠商事の中間決算は、純利益ベースで4384億円(前年同期比6.2%増)、通期予想と比較した全社ベースでの進捗率は50%となりました。ファミリーマート事業を中核とする第8カンパニーの進捗(83%)が業績を引っ張りました。ファミリーマート事業は、商品力強化が奏功したほか、中国事業再編に伴う一過性利益が業績を押し上げました。 一方、エネルギー・化学品(37%)、住生活(35%)など進捗が低水準に留まる事業セグメントも目立ちます。伊藤忠は今期、本来新たな中計を打ち出すタイミングであったのですが、外部環境の激変を理由に新たな中計の作成を見合わせ、単年度の目標を掲げた事業運営に取り組んでいます。外部環境の変化に対して堅牢な事業ポートフォリオを誇ってきましたが、中期的な戦略では踊り場に差し掛かっているようにも見えます。
【丸紅】純利益見通しは据え置きだが内訳は大きく変化
丸紅の中間決算は、純利益ベースで2381億円(前年同期比5.2%減)、全社ベースでの進捗率は50%となりました。通期の純利益見通しを4800億円で維持する一方、その内訳については期初(2024年5月2日公表)との比較で素材産業(マイナス100億円)、食料・アグリ(マイナス100億円)、エナジー・インフラソリューション(プラス90億円)、社会産業・金融(プラス60億円)など、比較的大きな見直しが行われたことがわかります。 全社ベースでは事業ポートフォリオ全体としてのマネジメントができている一方、個々の事業の業績についての読み違えがあり、個別事業の収益性についての再点検が必要な状況になっているのかもしれません。
【住友商事】事業環境の不確実性を払拭できず
住友商事の中間決算は、純利益ベースで2540億円(前年同期比10.9%減)、全社ベースでの進捗率は48%となりました。純利益5300億円の通期見通しは据え置きつつも、事業環境の不確実性に配慮して、下期に200億円のバッファを設定しました。 住友商事は2024年3月期に、大型の減損損失4件を計上していますが、そのうち最も大きな減損を計上したマダガスカルのアンバトビーニッケルプロジェクトについて、この9月にパイプライン破損事故を起こしており、決算説明会では業績そのものよりも業績リスクについて質問が集中しました。また、2026年度時点で新規投資からの利益貢献が40億円程度と見積もられており、決算説明の質疑では「利益成長への期待が持ちにくい印象」との指摘も出ました。2027年3月期の純利益目標6500億円の達成シナリオが見えづらくなっているともいえそうです。
畑 憲司