心を揺さぶる、声の饗宴「スプーンの盾」声優・山口勝平と諏訪部順一が語る、観客の想像の翼を広げる“生”の力
――東宝舞台の衣装さんたちが、一人一人の役者のために衣装を仕立てているのがすごいですよね。 諏訪部 「使い回しはしていませんからね。きちんと採寸して、専用の衣装を作ってくださいます。本当にありがたいです。しかも、作った衣装はちゃんと保管してあるんですよ。再演があった時、再び使えるように。帝劇の着到板の名札と一緒ですね」 山口 「衣装さんたちも本当に大変だと思いますが、そのこだわりや熱意を、僕ら役者も感じながら演じています。そういう意味では、生演奏も含めてすごくぜいたくにやらせていただいていますよね」 ――同じ役を何人もの役者さんが演じる本作。どう稽古されているのかが気になりますが、演出も手がける藤沢さんは、どのように演出されているのでしょうか? 諏訪部 「はじめに、役についての説明をしっかりとしてくださいます、あとは基本、各演者の表現に委ねてくださる感じですね。読み合わせや事前リハの際、物語の文脈的に齟齬(そご)がありそうな時は、『もっとこういうイメージで』といった具合の修整要望が入ります。自身の持ち味を発揮して思い切りチャレンジできるので、演者はみんな生き生きしていますよ」 山口 「自分で台本を書いて、自ら演出も担当していると、この作品における『正解』というものが、藤沢さんの中には絶対にあるはずなんですよ。僕が常々感心してしまうのは、藤沢さんが一人一人の役者に合わせて、演出を変えていること。その役者がどの言葉に共感し、どう表現するのかということを、すごく探りながら演出されているので、とても面白いんです」 ――演出の違いについて、具体的に挙げると? 山口 「役者のタイプを見ているんでしょうね。例えば感覚的に役を捉える人と、理論的に役を分析する人とでは、演出の仕方が変わります」 諏訪部 「藤沢さんは、あらかじめ用意した型の中に演者を押し込むということがありません。セリフや衣装、その他さまざまな演出という、武器や防具を用意してくださいますが、それらをどう使ってどう戦うかは各人の判断。お客さんと同じ目線で舞台を楽しんでいるのかもしれません(笑)」 山口 「もちろん最終的な交通整理はしてくださるので、我々も楽しんで演じることができるんです」