心を揺さぶる、声の饗宴「スプーンの盾」声優・山口勝平と諏訪部順一が語る、観客の想像の翼を広げる“生”の力
ベテランのふたりがひかれるのは、生の芝居が起こす化学反応
――お二人は、「スプーンの盾」に限らず、VOICARIONシリーズでは何度か共演されています。生の舞台でお互いの芝居を見て、改めてどのような魅力を感じましたか? 諏訪部 「実は勝平さんとは、アニメなどの現場でご一緒する機会はこれまでそれほどありませんでした。ご出演されている作品を、視聴者としてたくさん見てきてはいますが(笑)」 山口 「確かに。むしろ、VOICARIONシリーズでの共演回数の方が多いくらいじゃない?」 諏訪部 「そうだと思います。ですから今でも時々ふと冷静になると、『あ、山口勝平の声がする!』と思ってしまいます(笑)。勝平さんと自分は、声質にしても、世間から得手だと思われている役柄にしても、競合するところがあまりないですよね。だからこそ、一緒に演じていると刺激をたくさん受けます。『このセリフ、そういうテンションで言うんだ!』とか、『ここでためるんだ!』とか、自分の引き出しにはないアプローチをたくさんされるので、本当に勉強になります」 山口 「それに、普段やっているアニメのお仕事では、キャラクターが中心になる分、僕ら声優の自由度は、ある意味狭まっていくんですよね。監督から求められた役の枠の中で演じることが多いんです。でもVOICARIONシリーズの舞台ではその自由度が高いので、諏訪部くんの本来の演技を見ることができて楽しいです」
――VOICARIONシリーズでは「信長の犬」(20・21年)・「拾弐人目の服部半蔵」(22年)など、数多くの演目でご共演されていますね。 山口 「どの公演も、演じている役柄が本当に多彩だなと。諏訪部くんは、独特のリズム感と間をしっかり持っていらっしゃる方なので、聴いていてすごく心地いいんです。いつも楽しませてもらっています」 諏訪部 「勝平さんはとても真摯(しんし)に作品や役と向き合っていらっしゃるので、自分もがんばらねばと身が引き締まります。テンション高く、バチバチに掛け合ってくださるので、ご一緒させていただく時はいつも本当に楽しいです」 山口 「諏訪部くんとご一緒して一番楽しかったのは、やっぱり『信長の犬』ですね(※諏訪部は信長の犬・ルキフェル役、山口は豊臣秀吉を演じた)。特に第1幕のラスト。敵討ちに行くルキフェルと、天下人の座に王手をかけた秀吉のコントラストの中で、信長を救うために、ルキフェルが悲壮なまでに訴えかけてくるという場面は忘れられません。それぞれのシーンが交互に移り変わる演出で、演じていても胸にグッとくる、ものすごいシーンでした」 諏訪部 「楽しかったですよね、本当に。僕も『生の舞台っていいな』と改めて実感しました」 ――そんなふうに、出演者の皆さんが、生き生きと演じられる姿を見られることも、VOICARIONシリーズならでは。生の舞台の臨場感を、再び味わうことが楽しみです! 山口 「VOICARIONシリーズの公演を見に来てくださるお客さまって、すごく温かいんです。毎回、第1幕が終わる時や第2幕が終わる時、客席から温かい拍手が沸き起こるのが印象的で…。それも、VOICARIONの魅力の一つなのかなと思います」 諏訪部 「回を重ねるごと、お客さまがVOICARIONのフォーマットになじんできているようです。お客さまと作品との距離がどんどん縮まって、より深く物語に浸ってお楽しみくださっている気がします」