NBAファイナル、ヒートの3連覇を止めたスパーズの組織力
昨季と同一カードとなった「マイアミ・ヒート対サンアントニオ・スパーズ」のNBAファイナルは、スパーズが4勝1敗でヒートを下し、昨季の雪辱を果たして、7年ぶり5度目の優勝を手にした。第3試合からは、19点差、21点差、17点差と、ほぼ一方的な展開でスパーズが3連勝し、ヒートの3連覇を阻止している。個対組織。それが今回のマッチアップの構図だった。 対照的な2チーム。高い身体能力を誇るレブロン・ジェイムス、ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュの3人に導かれて勝ち上がって来たヒートに対し、スパーズはチーム全体の組織力で対抗した。 スパーズにも、ティム・ダンカン、マヌー・ジノビリーらのビッグネームがいるが、年齢による衰えを隠せず、個々の能力では絶対的に劣った。それをチームワークで補ったというわけだ。もっともバスケットの場合、そのチームワークという言葉の存在そのものが疑わしい。 例えば野球の場合、1人で相手に打つ勝つことはできない。どんな打者でも、せいぜい試合で打席に入れるのは、4回程度なのだ。アメリカンフットボールでも一人一人の役割が明確に決められていて、個人の力では、出来ることに限界がある。ところがバスケットの場合、同じ選手が攻撃し続けようとすれば、それも可能。4番打者がずっと、打席に立ち続けることが出来るのだ。 ヒートの場合、オールスターが3人。コートに立てる5人のうち、60%が4番打者なのだから、その個の力が、過去2年、連覇する原動力となってきた。そもそも4番打者を集めてチームを作るのはこのところ、結果も出しやすいことから、資金力のあるチームのトレンドでもあった。2000年代に入ると、レイカーズはシャキール・オニールとコービー・ブライアントという圧倒的な二人の力で3連覇を果たすなどした。2000年代の後半に入ると、セルティックスが、レイ・アレン、ケビン・ガーネットを獲得し、ポール・ピアースと合わせてビッグ3を形成すると、2008年のファイナルを制している。ジェイムスとボッシュは、2010年にウェイドのいたヒートに加入。その年からヒートは4年連続でファイナルに駒を進めた。 スパーズも元々は、そうしたチームだった。1999年に初めてファイナルを制したときには、デビッド・ロビンソン、ダンカン、ショーン・エリオットという3人ものオールスターがいたのである。2003年の優勝時は、ダンカンがリーグでも屈指のビッグマンに成長し、ゴール下で、圧倒的な支配力を見せていた。