NBAファイナル、ヒートの3連覇を止めたスパーズの組織力
その影響は補強などにも現れていて、 スパーズのベンチ層が厚かったのは、ダンカンらへ負担が少ないことによるものだろう。ヒートが、サラリーキャップなどの関係から、計算の出来ないグレッグ・オデン、マイケル・ビーズリーらと契約するしかなかったのとは対照的だった。また今回 、スパーズのクワイ・レナードという比較的無名な選手がファイナルでMVPを獲得したが、その現象こそが、2チームの違いを象徴していた。 スパーズのオフェンスは、シュートを回しながら、一番フリーの選手がシュートを打てば良い、という考え方だ。そのシステム化では誰もがシュートを打てる。オフェンスがジェイムスやウェイドに偏りがちなヒートとは対照的で、レナードがヒートにいたら、決してMVPを獲ることはなかったに違いない。 ところで、それなりに実績もある選手が、どうして、ここまで徹底して自己を犠牲に出来るのか。その理由は、表彰式の様子から伺えた。ダンカン、ジノビリー、パーカーらが、いわゆるヒーローインタビューを受けたが、彼らを率いたグレッグ・ポポビッチヘッドコーチは、選手の輪の後方に控えたまま、決して前に出ようとはしなかった。彼はただ、選手の喜ぶ様を、頬を緩めて見守っているだけだった。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)