NBAファイナル、ヒートの3連覇を止めたスパーズの組織力
ただ、そんなチームも2007年を最後に優勝から遠ざかる。ダンカンは38歳になった。ジノビリーは7月に37歳になる。彼らが30歳を越えた頃から、もうかつてのような圧倒的な強さで勝ち進むことが出来なくなっていた。そういう状況が、転機と言えば転機となったか。 ダンカン自身、「かつて出来たことが、出来ないことを理解している」と今回のファイナルで話した。その中で、スパーズは元々、チームプレイを重視するチームだったが、ダンカンを中心により“チームバスケット”を目指すようになっていった。同時に、裏で培われたものがあることに相手チームの選手は気づいていた。 ソニックス時代の2005年にプレイオフのセミ・ファイナルでスパーズに敗れたヒートのレイ・アレンは、「継続性こそが、彼らを支えている」と話した。「ダンカン、ジノビリー、パーカーの3人は、もう10年も一緒にやっているんだろう? 彼らは、言葉を交わさなくとも、それぞれの動きを理解しているから、的確なパスが出来るし、状況に応じたディフェンスが自然に出来る。個々の能力は衰えたかもしれない。しかし逆に、コンビネーションの力はより増した」。 それこそ結局、チームワークと呼べるものなのだろう。そのアレンにかつて、自分がGMとなってチームを作るとしたら、どこを参考にするか? と聞くと、真っ先に「スパーズ」と答えている。そして強いチームを作る条件をこう定義した。「中心選手が長く同じチームでプレイできること。それが出来ているスパーズは、だから長く勝ち続けられる」。 このところ、複数の中心選手が長く一緒にプレイできること自体が稀だが、スパーズはそれを実現している。ダンカンら3人は、今までに一度も、リーグで規定されている最大の契約を要求したことがない。よって、決して資金力が豊富とはいえないスパーズでも、3人をキープできる。 今年も3人合わせて年俸は、3000万ドル(約31億円)余り。ジェイムスらが3人で5700万ドル(約58億円)余りを占めるヒートとは構造が違う。