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　変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す　アジャイル仕事術』（ダイヤモンド社）は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤（IGPI）共同経営者（パートナー）でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立（自律）した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。 ●　短期的な成功が永続しない理由 　あなたの周りには、一度は華々しい成功を収めながら、その後伸び悩んでしまった人はいないでしょうか。ビジネスの成功には、もちろん実力も不可欠ではありますが、タイミングや運も大きく関わるため、偶然の要素が重なって一度に大きな成功を手にすることがあります。しかし、そうした成功を長期間にわたって繰り返すことは容易ではありません。 　その理由の一つとして、人はどうしても成功体験に固執してしまう傾向にあることが挙げられます。過去の方法や環境に依存してしまうことで新しい挑戦や学びに対して消極的になり、結果、時代の変化に取り残されてしまいます。「私が若手だった頃はこうやって契約を取った」と自信満々に語る上司が、今もなお第一線で活躍している例は少ないのではないでしょうか。 　また、現代はフレームワークや成功事例といった情報が溢れていますが、それらを模倣するだけでは、一時的な対策にはなっても、現場で課題を根本的に解決することはできません。ビジネス環境は常に変化しており、過去に有効だった手法が通用しなくなることも多々あります。そのため、短期的な成功に依存せず、変化に適応し続ける努力が求められるのです。 ●　長期的な活躍を支える「自分オリジナルの教科書」 　実は、長く活躍する人たちには共通する特徴があります。それは、過去の成功体験や参考書的なフレームワークに頼らず、「自分オリジナルの教科書」を持っていることです。これは単なる過去の成功体験の記録ではなく、自分の実体験をもとにした具体的なフレームワークや方法論の集積です。彼らは、失敗や課題を分析し、試行錯誤を通じて得た学びを具体的なエピソードとともに蓄積しているため、状況に応じてそれらを柔軟に活用することができます。 　このようにして蓄積されたメモは、日々の忙しさで忘れがちな重要な学びを記憶に定着させ、必要なときに取り出せる「実践的な教科書」となります。このプロセスを通じて、単なる模倣を超え、自分独自の方法論を確立することが可能になるのです。 ●　自分オリジナルの教科書を作るための第一歩 　では、どのようにして「自分オリジナルの教科書」を作り上げていけば良いのでしょうか。 　例えば、心に留まったイベントや出来事をメモとして書き留めるだけでも、自分だけの教科書を作る第一歩となります。重要なのは、出来事をありのまま記録することです。抽象化や整理を意識する必要はありません。 　具体的には、プロジェクトの成功要因や失敗から得た教訓、新規事業の人選に関するプロセスなどを簡単に箇条書きにすることで、後から見返して有用なヒントを得られるようになります。これを習慣化し、蓄積したイベントを『いつか見た景色』として思い出すことで、必要なときに抽象化して取り出せるフレームワークが自然に形成されるため、環境が変化した際にも柔軟に対応できる力が身につきます。 　加えて、これらの教科書は、時代や環境の変化に合わせて常にアップデートし続ける必要があります。単に知識を蓄積するだけでなく、それをもとに新しい視点やアイデアを生み出す習慣が、長期的な成長を後押しするのです。そして、この継続的な取り組みこそが、時代に適応しながら成果を上げ続ける秘訣と言えるでしょう。 　アジャイル仕事術では、自分オリジナルの教科書を作るための具体的な方法をはじめ、働き方をバージョンアップする方法を多数紹介しています。 坂田幸樹（さかた・こうき） 株式会社経営共創基盤（IGPI）共同経営者（パートナー）、IGPIシンガポール取締役CEO 早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士（MBA） 大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト＆ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤（IGPI）に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる　アーキテクト思考』（ダイヤモンド社）がある。『超速で成果を出す　アジャイル仕事術』（ダイヤモンド社）が初の単著。