34歳、ゲレンデを買う──勢いにもほどがある。それもまた人生だ!(Vol.3)
購入車両決定
希望するディーゼルモデルは、モノグレードだから内外装のカラーリングと年式、メーカーオプションを理想に近づければ良い。なおメーカーオプションとして、ほぼすべての個体に「ラグジュアリーパッケージ」が装着されていた。これは電動開閉式スライディングルーフと本革シート(前席・後席シートヒーター付)を含む。逆に、これが装着されていない車両は皆無。標準のファブリックシートモデルは、滅多に出回らないそうだ。 個人的には、外装が「チューライトレッド」で内装がブラックという組み合わせに強く惹かれる。年式はエンジン性能(最後出力211ps→245ps)が向上し、かつインフォテインメントシステムがApple CarPlayにも対応する2017年式以降のG350dがベスト。パーキングアシストリアビューカメラに、ステアリングの舵角に応じた走行軌跡を表示するガイドラインが追加されているのも、使い勝手を高めるのでイイ。 早速、エスアンドカンパニーの鹿田さんに相談すると「イナガキ君ね、希望はわかったけれども、“赤”は市場になかなか出てこないんよ……」と、難しそうな表情をする。訊くと、Gクラスは黒かシルバー、白がほとんど。その他の「ペリクレースグリーン」や「シトリンブラウン」といった個体は希少という。 タマが少ない分、中古車相場がちょっと安価であれば狙い目かも? と、思ったが、見通しが甘かった。オートオークションにもあまり出品されないという。 そこで、理想はチューライトレッドだけれども、ほかのボディカラーでも「これは!」と、思う個体が出てきたら、連絡してもらうことにした。 すると約1週間後、鹿田さんから「イナガキ君、めっちゃ、ええ個体がオークションにあるんだけど、どうかな!?」と、連絡があった。15年式のG350ブルーテックで、ラグジュアリーパッケージ付き。ボディカラーは黒だ。 G350ブルーテックかぁ……ディストロニック・プラスやブレーキホールドといった運転支援装備は搭載するし、快適装備も希望するG350dと遜色ない。飛ばすようなクルマではないからちょっとパワーが低いのは問題ないけれど、Apple CarPlayとパーキングアシストリアビューカメラのガイドラインは欲しい機能だから悩む。なによりグレード名が、現行モデルにない“ブルーテック”というのが気になる。やはり、おなじ“d”のほうが心象はイイ。 ちょうど連絡がきた時、遠方での取材が立て込んでいたため「すいません! とりあえずあとで電話しします!」と、伝えるので精一杯。そして1時間後、ふたたび、「先ほどは申し訳ありませんでした!」と、折り返すと……。 「イナガキ君、ごめん落札しちゃった。相場よりだいぶ安かったんよ。ホンマ大丈夫やから、安心して!」 というわけで、人生初のGクラスは、7.6万km走った15年式のG350ブルーテックで呆気なく決定。鹿田さんとの信頼関係がなかったら、きっとあり得ない購入方法だ。 「とりあえず諸々整備するから、ちょっと待ってね。1カ月ぐらい時間を下さいませ」 黒のゲレンデなんぞ、都心部で頻繁に見かけるからずっと敬遠していた。かつて“六本木のカローラ”と揶揄されたBMW「3シリーズ」(2代目・E30)を、彷彿とさせるぐらい多い。まさかそれに乗るとは夢にも思わず……これはもう“縁”と思うしかない。 それに、Apple CarPlayが未搭載ならばスマートフォン用のフォルダーを装着すればOKだし、パーキングアシストリアビューカメラのガイドラインもなければないで「ま、いいか」と、思ってきた。 それよりも、相場より買い得なGクラスが購入できたのに大満足である。BMWから始まったカーライフの12台目を飾るのは、初のオフローダーでディーゼル、そして高級車の代名詞とも言うべきメルセデス・ベンツ。“初”づくしで感慨深い。 次週は購入に向けての準備についてリポートする。
文と編集・稲垣邦康(GQ)