一方的に長崎を去った指揮官が今度はサントスを事実上の解任。カリーレに何があったのか。試合前には「アホ・コール」まで…【現地発】
監督交代が頻発するブラジルでも稀なケース
昨シーズンにブラジルリーグ1部から降格して今シーズンは2部で戦い、2節を残して1部への返り咲きを決めていた名門サントスが11月17日、2部リーグ優勝を決めた。 その翌日、クラブはファビオ・カリーレ監督と来シーズンは契約を結ばないことを発表した。事実上の解任である。 今シーズン最大の目標だった1部復帰を危なげなく実現し、しかも優勝で花を添えながら、最終節を待たずしての解任-。これは監督の交代が頻発するブラジルでも、なかなかな稀なケースだ。 サントスがカリーレを解任した理由は、以下が考えられる。 1)クラブが伝統として重んじるのは、才能に溢れた若手が躍動する超攻撃スタイル。目先の勝利にこだわるあまり若手の起用に慎重で、戦術的な目新しさにも乏しいカリーレのフットボールに、クラブ首脳とサポーターは不満を抱いていた。 2)過去、サントスの宿敵コリンチャンスの監督、コーチとして多くのタイトルを獲得しているカリーレは、「コリンチャンスの人」というイメージが強かった。それに加え、シーズン中にコリンチャンスからオファーを受けて乗り気になったと報じられた。最終的にクラブ間で合意に至らず、退団には至らなかったが、サントスのクラブ関係者とサポーターの心証を害した。 3)シーズン中盤以降、サポーターがカリーレへの敵意をむき出しにした。試合前に名前がコールされると、何もしないうちから「ブーホ」(アホ)コール。選手交代の効果が乏しかったり、勝利を逃したりすると、さらに痛罵が浴びせられた。 【画像】“世界一美しいフットボーラー”に認定されたクロアチア女子代表FW、マルコビッチの厳選ショット 結果が最優先されるプロの世界でほぼ最高の成績を収めながら、サポーターから罵声を浴び続け、解任の憂き目に遭う――。これはさすがにやり過ぎだろう。言い換えれば、サントスはそれほどまでに格式が高く、クラブ関係者とサポーターはプライドを持っている、ということか。 カリーレは、2022年6月末から昨年末までV・ファーレン長崎(J2)を指揮していた。昨年末にサントスがカリーレの監督就任を発表すると、長崎は「すでに我々と契約を延長していた」と主張。契約違反の認定と違約金の支払いを求めてサントス、カリーレらをFIFAへ提訴した。 この件に関して、現在までFIFAは裁定を下していない。そして、当のカリーレはすでにサントスを退団したというわけだ。 今現在、ブラジルではこの問題に言及する者はなく、「すでに忘れられた過去の出来事」と化している。 文●沢田啓明 【著者プロフィール】 1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。
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