衝撃デビューの広島森下は白星逃すも「始まったばかり」…横浜DeNAラミレス監督は「エースになれるポテンシャル」と異例の最大級敬意
この日の104球の内訳をみると、ストレートが38%、カットが33%、チェンジアップが16%、カーブが13%という比率だ。39球を投じたストレートのうち150キロを切ったのは、わずかに7球。といっても6球は149キロだから、ほとんど変わらない。しかも、緊張から力みのあった序盤の5球で3回以降は2球あっただけで、180センチ、76キロの細みの体をしならせ、ほぼ真上から角度を作って投げ降ろす典型的なオーバースローでムラなくストレートの質をキープできるのも森下の持ち味である。 加えて、その昔、「ドロップ」と呼ばれた軌道の113キロのカーブで、打者の目線を上下に動かし、カットという小さな変化と、コントロールに絶対的自信のあるボールを、同じリリースポイント、同じ腕の振りで、上から投げ降ろしてくるから打者はバットの芯を外すどころかボールにかすりもしない。落ちるボールは、チェンジアップ1種類だが、このボールにも精度があり三振の取れるウィニングショットである。 故・野村克也氏は、自由に操れる「勝負球」と「カウント球」を2種類以上持つピッチャーは「一流」と評したが、森下は、その「一流」の条件を兼ね備えている。 ラミレス監督は、「森下は、ほとんどミスがない、非常にパワフルな球を投げていた」とも分析したが、決して社交辞令ではない。 だが、9回に悪夢が待っていた。新勝利の方程式のクローザーを任した新外国人のスコットが登板2試合目にしてセーブに失敗。森下のプロ初登板初勝利の快挙を吹き飛ばしてしまった。佐々岡監督も、「森下は、前回(練習試合)の反省を生かし7回まで投げてくれた。自信を持って欲しい。勝ちをつけてあげられなかったのは自分の責任」と悔いた。 森下という衝撃の新戦力の披露と同時にカープの死角もさらけだしたのである。スコットは、スライダー、ツーシームとボールを動かして勝負するタイプだが、ボールに警戒すべき球威がないわりにコントロールが甘いので集中打を浴びるリスクを持つ。練習試合の結果を見て、佐々岡監督が、消去法で選んだストッパーは、点差のある前日の試運転でも1点を失っていた。 佐々岡監督は、「まだ2試合目だからね。1点差で難しい試合だった。これからもこういう試合は続くだろうからスコットには、しっかりやってもらわないと」と、スコット守護神構想を動かさない考えを示したが、中崎の復調や、フランスワ、菊池保の今後の調子次第では配置転換もあるのかもしれない。 だが、森下という計算の立つ新戦力がカープの投手陣に加わったのはV奪回へ向けての頼もしい追い風になる。森下は、そのうち勝つだろう。いや、それも、120試合という制限があるシーズンに驚異的な数字を残す可能性さえ感じさせた。 「ゲームを作るピッチングを今後も続けたいです」 無類のイケメン。観客が入るようになれば、カープ女子は放っておかないだろう。森下の次回登板は28日の中日戦(ナゴヤドーム)が予定されている。