Amazon、楽天、LINEヤフーのモール運営はどう改善された? どんな対応を求めている? 【経産省の「透明化法」評価まとめ】
1. 返品条件について、あらかじめ利用事業者に与える影響等も考慮して適切に設定していることを公表・説明すること 2. 個々の返品判断や返品情報の提供、異議申し立てに関する取り組みについて積極的にわかりやすく説明し、利用事業者の理解を促進すること 3. 返品判断について利用事業者から異議申し立てが行われた場合、利用事業者と十分なコミュニケーションを行い、個々の事案に即した適切な解決を図ること 4. 返品に関する補償に関連する取り組みについて、公表・説明すること
経産省は、アマゾンジャパンの直近の取り組みとして「出品・販売に関して重要と思われる規約やヘルプページをまとめたページを新たに作成・公開したことは評価できる」(経産省の取りまとめより)とした一方、2022年度の大臣評価で示された内容のさらなる対応を求める方針を示した。
┌────────── 利用事業者の不満の声が多い類型ごとに、(1)返品・返金の条件 (2)返品・返金の判断権者 (3)アマゾンジャパン・利用事業者・消費者のそれぞれの金銭的負担の在り方(返送時の送料を含む)をわかりやすく整理・説明することが求められる。(経産省の取りまとめより) └────────── ■ 4. 不正行為の取り締まり、相乗り出品に伴う課題、商品の販売価格の推奨、販売手数料カテゴリーの事前説明なしでの設定・変更 □ 不正行為の取り締まり ECプラットフォーム運営企業に対し、プラットフォーム上での不正な行為の取り締まりを要請しても、定型的な回答しか返ってこないという声は少ないくない。出店者からあがっている不正行為の例は次の通り。 ・無在庫販売 利用事業者が、他の利用事業者の商品ページの画像などを盗用して販売ページを作成し、無在庫のまま販売。消費者が購入した場合には、他の利用事業者から商品を購入し、消費者に発送。 ・不正注文 競合他社と思われるところから、在庫量を超える大量の注文がなされ、発送ができない上、在庫が押さえられるため、他の注文を受けることができない状態となり、最終的には当該大量注文はキャンセルされることが繰り返される。 2023年度のモニタリングレビュー※では、LINEヤフーは次の取り組みを報告した。 ・無在庫販売は、この半年、1年での相当重要な事例と認識しており、現在、徹底して対策をとっている。 ・画像転載に関して、著作権侵害が明らかであると確認できるものについては削除対応を実施したり、在庫確認のヒアリングをストア側に実施するなどの対策を実施している。 ※……モニタリング・レビューとは 特定デジタルプラットフォーム提供者より提出された報告書と、「デジタルプラットフォーム取引相談窓口(オンラインモール利用事業者向け)」(DPCD)に相談者から寄せられた声を、特定デジタルプラットフォーム提供者の改善につなげること。有識者や利用事業者の業界団体などからなるモニタリング会合での議論に反映し、特定デジタルプラットフォーム提供者の運営状況についてレビューを行う。議論の結果を踏まえ、経済産業大臣による評価を報告書の概要とともに公表。大臣評価を受けて、特定デジタルプラットフォーム提供者は運営改善に努める運びとなる。 DPCDは、「透明化法」の実効的な運用を図るための手段の1つとして運営されている相談窓口で、ECモール出店者からの相談を受け付けている。経産省からの委託を受け、公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が2021年4月1日から運営している。 「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価」では不正行為の取り締まりについて、次のようにECプラットフォーム運営事業者へ対応を求めた。 ┌────────── 特定デジタルプラットフォーム提供者には、利用事業者との相互理解の観点から、出店者からの取り締まり要請に対して、丁寧な状況説明をしていくことが求められる。(経産省の取りまとめより) └────────── □ 相乗り出品に伴う課題 アマゾンジャパンは1商品につき販売ページ(カタログ)が1ページの構成を採用しており、同一の商品に複数の販売事業者が存在する(相乗り出品)。この場合、「出品者が商品カタログに問題を発見しても、当該出品者にページの修正権限がなく、迅速な修正がしにくい場合がある」「利用事業者が同じ商品を販売する他事業者による不正行為の影響を受ける場合がある」などの声があがっている。 こうした声に対してアマゾンジャパンは、次のような取り組みを報告している。 ・利用事業者が既存の商品ページに出品される際に、アマゾンジャパンや商品ページを最初に作成した利用事業者が関与することはない ・商品ページは公開されているため、他の利用事業者が、自身が作成した商品ページに相乗りしてきた場合は、公開されているページを通して確認することができる ・自社商品に関して、他の利用事業者が商品ページを作成した場合、知的財産権侵害などに該当する場合については取り下げを依頼できる。商品ページの情報に誤りがある場合は、アマゾンジャパンに問い合わせることによって、商品ページの内容の変更を依頼することが可能 ・ブランドの保有者による商品ページへの情報入力に関しては、特段確認を行っていないものの、それ以外の利用事業者が修正を依頼した場合については、依頼されている情報が正しいものであることを示す証拠を、修正依頼とともに提出することを求めている □ 商品の販売価格の推奨 「Amazon.co.jp」では、出品商品が「おすすめ出品」への表示有無が売り上げに大きな影響を与える。 アマゾンジャパンによる「おすすめ出品」の選定基準は、他社と比較してより低い価格であることが必要とされている点で、自由な販売行為が制限されている懸念があると指摘。利用事業者から「競争力のある価格に設定せねば、販売件数が激減する」「競争力のある価格でないと判断されると、おすすめ出品に掲載されず、当該カタログ上におすすめ出品の基準を満たす商品がないと在庫切れかのような簡素な表示になるため、値下げせざるを得ない」といった声があがっている。 こうした指摘について、アマゾンジャパンは次のように報告した。 ・設定されている価格が著しく高い価格などでない限り、利用事業者が商品の販売価格を決定できる。競争力がある価格ではないという理由で、出品停止になることはない ・販売価格や配送品質などを含め、競争力のある販売条件にて出品している商品が「おすすめ出品」に選ばれるが、過度な値下げや負担を求めるものではない □ 販売手数料の事前説明なしの設定・変更 アマゾンジャパンが販売手数料カテゴリーを定めることから、次のようなケースが生じている。 ・事前の説明なく、利用事業者の意図していないカテゴリーに設定・変更される ・商品ページ上に表示されているカテゴリーと販売手数料カテゴリーが一致しない 利用事業者からは「販売していたカテゴリーとは異なる販売手数料カテゴリーの手数料率(商品カテゴリーに当てはめた場合よりも高い手数料率)で手数料を請求された」「カテゴリーが違っていることについて質問をしたが、なぜその販売手数料カテゴリーが正しいのか説明を受けることができなかった」などの声があったという。こうした問題に対して、アマゾンジャパンは次の取り組みを報告した。 ・利用事業者が出品する各商品に適用される販売手数料カテゴリーについては、利用事業者が自ら確認可能であり、その旨もヘルプページで案内している ・販売手数料カテゴリーは、商品ページ上に表示されているカテゴリーやブラウズノード(サイト上で表示されるカテゴリー一覧に紐付けるために必要な設定)と必ずしも一致していない場合があり、「販売手数料が変更された」との誤解を招いたものと考えられる 透明化法や指針では、苦情や紛争に関する情報を有効に利用し、運営改善を求めている。こうした法令の趣旨を踏まえ、アマゾンジャパンに対して「相乗り出品に伴う課題」「商品の販売価格の推奨」「販売手数料カテゴリーの設定・変更について」への対応を次のように求めた。 ┌────────── システムの不完全性などを原因として利用事業者の不利益が発生しており、かつ、これらに対して納得のいく説明を利用事業者が受けることができていない状況にある。アマゾンジャパンには、こうした観点から早急な対応(相乗り出品などのビジネスモデルに伴う出品者の不利益の緩和に向けた取り組みや説明)を行うとともに、利用事業者からの相談・苦情などがあった場合には、丁寧な説明や真摯(しんし)な対応を行うことが求められる。(経産省の取りまとめより) └──────────