上司にきらわれたくない...公認心理師が身につけた「嫌な人間関係の上手なかわし方」
すきま時間にできる気分転換
心が完全に折れてしまうと、立て直すのに時間がかかります。だからこそ、元気なうちにリフレッシュできることを見つけて、「しんどくなったらこうしよう」と決めておくといいでしょう。 散歩をする、おいしいものを食べる、掃除をするなどの気分転換で心がすっきりするという人は多いです。時間やお金に余裕があれば、旅行をするのもいいでしょう。 どんな方法が合うかは人それぞれですが、「不安なことを考えない時間をつくる」のがポイント。何もすることがないと、人間はいいことよりも不安なことのほうを考える習性があります。考える時間を減らし、今やるべきこと、楽しめることに集中しましょう。 それでもふとした瞬間に不安を感じたら、気分転換をしてください。日常的に心を整えられる4つの方法をご紹介します。 ①深呼吸 不安なときほど焦って呼吸が浅くなりがちです。深い呼吸をすると「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが出てリラックスでき、問題解決のために新たなひらめきが生まれます。 ②ストレッチ 手足を伸ばすと、副交感神経が働いて落ち着きます。 ③温かいものを飲む コーヒーや紅茶など、好きなものでOK。香りとの相乗効果で心を癒やせるでしょう。 ④ジャーナリング 心配なことを書き出します。優先順位や対策を考えることで、漠然とした不安を整理できます。 どれも1分から15分程度でできるものなので、自宅や移動中などのすきま時間にやってみてください。
人間関係で心を乱されないために
自分だけで不安を抱えきれなくなったときは、人に頼るのも一つの手です。とはいえ、とっさにだれを頼ればいいかわからないこともあるでしょう。人間関係は観葉植物と同じで、水をあげないと育ちません。ふだんから連絡をとり合える人を探し、安心できる居場所を見つけておいてください。 理想的なのは、自分がしんどいときだけ一方的に頼るのではなく、相手に嫌なことがあったときも聞いてあげられるような、助け合える関係を築くことです。 一方で、人間関係においては、境界線を意識することも大切です。境界線とは、「これ以上は踏み込んでほしくない」という、目に見えない垣根です。家族や親しい友人でも越えてはいけないものであり、自分や他人を尊重するものでもあります。 苦手な人がいたら、この人とは仲良くならなくてもいいと割り切り、最低限の礼儀はわきまえたうえで淡々とした態度で接することで、自分の境界線を守ることができます。 たとえば、気の合わないママ友にランチに誘われて断りたいときは、お礼とお詫び、できない理由を丁寧に伝えれば充分です。 「お誘いありがとうございます。でもごめんなさい。どうしても予定があって参加できないんです」といった感じでしょうか。わざわざけんかを売るような言い方をする必要も、へりくだりすぎる必要もありません。断ったことで相手がどう思うかは、相手の領域。きらわれるだろうかとか、気を悪くされるだろうかと思い悩むのは、相手の領域に入り込んでいることになります。 私は看護師になって最初に配属された職場で、上司と合わず、しんどい思いをしました。私は患者さんに対して極力丁寧な言葉で話すようにしていたのですが、その上司は、精神科では少々くだけた話し方をしたほうが患者さんに心を開いてもらえるという考え方だったため、「話し方が気に入らない」と言われたのです。 そこで「上司にきらわれたくない」と思うとつらくなりますが、「自分の役割を果たせばいい」と考えれば、落ち込むことを防げます。私は「そうですか」と受け流し、やるべき仕事に淡々と向き合いました。そのうち上司は何も言ってこなくなりました。 くだけた話し方を好む患者さんばかりでないこともわかり、丁寧に話すからこそ信頼してもらえるケースも経験しました。 自分は自分、他人は他人と考えると、人間関係も円滑になります。それに、どんな関係も永遠に続くわけではなく、必ず環境が変わるときが来ます。期間限定だと思って、自分の心を守りながら過ごしましょう。
上野恵利子(公認心理師)