「次に死ぬのはお前だ」父の死で使命に気づいた医師が「全然誰にも相手にされない」健康医学教室を15年がかりで15都市に広げた一部始終
人生100年時代、健康管理の大切さはよくわかっているつもりだけど、運動も食事も整えるのは明日からでいいかな……。 私たちはみな、「重要性はわかっていても、いますぐ健康のための行動はできない」ものでしょう。ところが、受講者の90%近くがリピートし、「聞いただけで急に健康スイッチが入った」「なぜか急に健康状態が改善されてしまった」「何を誘っても無視しつづけてきた夫がわずか半年で私より元気になった」と口々に感想を述べる教室があります。 いまから15年前に、鹿児島市の開業医が手弁当で始めた健康医学教室、「りんご教室」。かわいらしい名前ですが、その威力は強力です。なぜこの教室を始めたのか、その一部始終を伺いました。
人は毎日りんご1個分「入れ替わっている」。半年でほぼ全身が入れ替わる
「ここにりんごがあります。この、少し大きめのりんごは、体重80㎏相当の人のりんごです。あなたの体重はどのくらいですか?」 はい。私は50㎏台、同世代女性も平均54~55㎏くらいですね。 「では、この小さいりんごが50㎏相当の人のりんごです。なぜりんごを出してきたかと言うと、毎日、みなさんの体内は、それぞれりんご1つ分だけ入れ替わっているのです」 ……? えっ、そんなにたくさん? 「はい。よく、人は『食べたものでできている』と言いますね。あなたの細胞は1日、頭の先から足の先まで、りんごの量くらい作り変わっているんです。これだけ作り替えるには、食べたものを運ぶ血液の流れが必要ですよね」 そうですね、食事で摂った栄養は小腸で吸収され、血液に乗って体内を流れるんですよね。 「ですが、年を取るとその血液の流れも悪くなります。だから運動が必要です。また、ストレスがかかると気持ちが落ち込んで、たとえば60歳の人も70歳の気持ちになってしまう」 えっ、ストレスで気持ちが老け込んでしまうということですか? 言われてみれば、そうかも、なにか後ろ向きになるかも。 「すると、不思議なことに体の質も70歳相当になってしまいます。いっぽうで、わくわくしていると50歳くらいの質になります。なぜならば、感情とホルモンはつながっていて、その質も変わるからです」 こう説明を始めたのは、つみのり内科クリニック 院長・山下積德先生。「つみのり先生」の愛称で親しまれる山下先生は、鹿児島市で開業して今年で20年。ご専門は内科・循環器内科です。 「毎日入れ替わる細胞の量と質が劣化することで人は加齢します。その加齢をホルモンが後押しして進めます。逆に言えば、入れ替わる内容の質と量を高めれば、加齢は止まり、人は若返ることができるのです」 あ、それは聞いたことがあります、最近よく言われる抗加齢、若返りの概念ですね。 「そうです。入れ替わりを意識することで、ホルモン補充療法のような薬の治療だけでは難しい部分を相互に補い合うことができます。この抗加齢の実践を、私は開業した2004年に実現しようとしたのですが……」 2004年!それはものすごく時代を先取りしていたのでは? 「はい。ですが残念ながら中身が難しすぎて(笑)。現在の、誰にでも実践していただける『りんご教室』にたどりつくまで15年もかかってしまいました」