自民党の「夏の宿題」が手付かずのまま、その原因は政権内亀裂だ 生煮え対応の政治刷新本部で何が起きていたのか【裏金政治の舞台裏④】
2月中旬、政治資金に関する具体的な制度改革に向けた刷新本部の作業部会が始動した。取りまとめ役は木原氏や鈴木馨祐氏、松本洋平氏、牧島かれん氏らいずれも当選5回以下の議員だった。 ここで世代間対立が生まれる。「党の実態を分かってない人に任せていいのか」。政治資金パーティー券購入者の公開基準額の引き下げや、使途が公表されない政策活動費など「党資金の心臓部」を役員経験がない中堅が扱うことにはベテランから不満が漏れたのだ。この頃、首相と秘密裏に官邸で面会した党幹部は「どこに結論を持っていかれるか分からない」と苦言を呈していた。首相は黙って聞いていたという。 案の定、自民党は迷走する。首相は4月3日、鈴木氏を官邸に呼び、改正原案作成を急ぐよう指示した。 ところが、12日に開いた作業部会後、鈴木氏は「自民党としての改正案の取りまとめは今の時点で検討していない」と記者団に説明してしまう。 「なにを勝手なこと言ってるんだ」。首相は周辺にいらだちを募らせた。鈴木氏は公明党との協議を見据え「両方があらかじめ案があると歩み寄るのが難しい」と理由を説明したが、党執行部は「官邸と実務者が意思疎通できていなかった」と振り返る。
パーティー券購入者の公開基準額に関しては、自民、公明両党の実務者の調整内容を幹部が覆した。実務者間では5月下旬までに「10万円超」でいったん大筋合意していた。ところが、5月29日、公明党の北側一雄副代表が自民党の森山裕総務会長に電話を入れる。「選挙のことを考えるともう一歩何かを歩み寄ってくれないと賛成できない。やはりパーティーを5万円にしてくれないか。これは山口那津男代表の考えでもある」 「5万円案」には麻生、茂木両氏が「将来に禍根を残す」と反対する。首相は受け入れるよう進言する森山氏との間で板挟みとなった。最終的に公明案に乗ることを決断したが、協議の最前線にいる実務者や麻生氏らとしこりが残った。 ▽かき消された野党けん制 森山氏は「迷惑を掛けた方が迷惑がかかった方の言い分を聞くのは当然」と公明党への譲歩の正当性を訴える。一方で「なぜ10万は駄目で、5万は問題がないのか」という点については議論が深まらなかった。