自民党の「夏の宿題」が手付かずのまま、その原因は政権内亀裂だ 生煮え対応の政治刷新本部で何が起きていたのか【裏金政治の舞台裏④】
「政治とカネ」を巡る自民党改革の司令塔となる党政治刷新本部(本部長・岸田文雄首相)が6月23日の国会閉会後、機能停止状態に陥っている。政治資金の透明化に向けた第三者機関設置など改正政治資金規正法の検討項目は棚上げ。つまり「夏の宿題」は手つかずのままだ。裏金事件対応が生煮えとなる背景には、政権幹部間の深刻な亀裂がある。刷新本部内で何が起きていたのか。議論の過程を追った。(共同通信裏金問題取材班=植田純司) 【写真】夜、岸田首相は公邸で日本酒をあおり、突っ伏して寝てしまった。「頼りないと言われても権力は健全じゃないといけねぇんだ」丁寧な言葉遣いがべらんめえ調になるのは…
▽消えた「派閥解消」 「自民党を巡る現在の状況は極めて深刻だ。一致結束してこの事態に対応しなければならない」。年が明けてまもない1月11日、党本部で開かれた政治刷新本部の初会合で岸田首相がハッパを掛けた。派閥パーティー裏金事件が政権の命運を大きく揺るがしていた。 その4日後、茂木敏充幹事長や首相側近の木原誠二幹事長代理、小倉将信前こども政策担当相ら刷新本部の「インナー」とされる幹部陣がひそかに党本部の一室に集まった。主な議題は中間報告での派閥の在り方に関する書きぶり。「政策集団による政治資金パーティーの禁止」「派閥の『資金と人事』からの切り離し」…。共有された原案にはその後、成案に反映される事項が列記されていた。 関係者によると、原案には「いわゆる派閥の解消」や「政策集団の事務所の閉鎖」も盛り込まれていた。出席した党幹部は「首相の派閥解消への思いは強い」と歓迎した。実際、1月18日に自らが率いた岸田派(宏池会)の解散方針を表明した。
だが、23日に取りまとめられた刷新本部の中間報告では「派閥の解消」は見出しだけにとどまり、「事務所の閉鎖」は削られた。派閥について「本来の政策集団に生まれ変わるため、カネと人事から完全に決別する」と強調したに過ぎなかった。「政策集団」という名の下で派閥が存続することも可能だと受け取れる内容だった。 骨抜きとなったのはなぜか。首相の後ろ盾である麻生派(志公会)会長の麻生太郎副総裁の「鶴の一声」が大きく影響した。岸田首相と電話し「志公会の政治資金は口座管理など適正に処理してきた。うちは派閥をやめない」とくぎを刺していた。 麻生氏はその後も「本来だったら真相究明、再発防止、カネの問題と順を追うべきだが、いきなり派閥の解散が来た。順番が違う」と同派議員らに不満を示している。麻生派はいまなお、東京・平河町の全国旅館会館に事務所を構え、派閥活動を続けている。 刷新本部の最高顧問には筋金入りの派閥解消論者である菅義偉前首相も名前を連ねていた。首相は菅氏の意向も踏まえ「いわゆる派閥ではなくなる」と胸を張ったが、菅氏に近い閣僚経験者は「派閥解消を徹底できなかった時点で刷新本部は失敗に終わった」と切り捨てた。 ▽いらだち募らせる首相