BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代? CD販売が失速、株価半落の大手事務所も
アルバム輸出、9年ぶりに減少の衝撃
だが、問題を抱えるのはYGだけではない。韓国の4大音楽事務所──YGエンターテインメント、SMエンターテインメント、HYBE、JYPエンターテインメントはすべて今年に入って大きく株価を下落させ、上半期の時価総額は昨年同期比30%も減少した。 これを象徴するかのような"事件"が7月15日、明るみに出た。韓国関税庁が発表した輸出入貿易統計によると、今年上半期のCDアルバム輸出額は1億3032万ドルで、前年同期比-2%と9年ぶりの減少となった。内訳では日本への輸出額が4693万ドルで最も多く、米国が3045万ドルで後に続いた。K-POP業界の不振の主な要因とされてきた中国向け輸出は1840万ドルで、全体の14%を占めるに止まった。対中輸出額は前年比18.7%も減少したことになる。 またアルバムの販売量も減少した。韓国音楽コンテンツ協会が集計するサークルチャートによると、上半期のトップ400アルバムの販売量は4760万枚で、昨年比800万枚、15%減少した。4大音楽事務所に限ってみても昨年上半期のアルバム出荷量は5345万枚だったが、今年上半期は4474万枚と17%近く減っている。一体何が起きているのだろうか? <主要アーティストのアルバム販売がダウン> 今年上半期、K-POPアーティストのリリースしたアルバムは残念ながら前作に及ばない販売量を記録したケースが多かった。 アルバムの初週の販売量(ハントチャート基準)を前作と比べてみると、SEVENTEENは509万枚から297万枚に、ZEROBASEONEは213万枚から135万枚に、BTSのRMは62万枚から56万枚に、IVEは161万枚から132万枚に、Red Velvetは41万枚から27万枚へとそれぞれ減少した。aespaは113万枚から115万枚に小幅増加したが、昨年170万枚を記録した3番目のミニアルバムを超えることはできなかった。もちろん、SEVENTEENのアルバムは新曲が少ないベストアルバムである点と、RMは兵役のためプロモーションが事実上なかったという点もあったことは考慮されるべきだが、全体として売上が落ちていることは否めない。 <アルバム販売は2023年がピーク?> さらに販売減の要因として指摘されるのは、これまでの過度なアルバム販売戦略がファンたちの疲労感を呼び起こしたのではないかという点だ。 特にNewJeansの所属事務所ADORのミン・ヒジン代表が、親会社HYBEを批判する記者会見で指摘した「フォトカード」や「押し出し」はK-POPに限らず、世界のレコード業界の抱える問題として注目を集めている。 このうち「押し出し」とは、アルバムの初回販売数を上積みさせるため、レコード会社が卸売業者にCDを一定数を買い取らせる商法を指す。卸売業者はCDを売り切るために一定枚数を購入したファンを対象としたアーティストのサイン会を実施するが、熱心なファンは何度もアーティストとの触れあいの機会をもちたいからと沢山のアルバムを購入するため、1回のサイン会が数時間もかかることがある。それでなくても新曲のプロモーションで多忙なアーティストがさらに疲弊する要因になっていると問題を指摘する声は多い。 またK-POPに限らず、近年のレコード業界はアルバム販売数を引き上げるためにアルバムジャケットのビジュアルを複数バージョン作ったり、アーティストの「フォトカード」を複数作ってランダムに封入することで同一アルバムをファンに何枚も売りつける販促戦略を使ってきた。 米ビルボードは最近「アーティストたちがこれまでになく多くのバージョンの異なるアルバムを出している」という記事を通じて14種類のバージョンでアルバムを出したテイラー・スウィフトの事例と共にK-POPについても取り上げた。ビルボードは「CDのバリエーションは多くのK-POPアーティストが『ビルボード200』で好成績を出すことを助けた」として「韓国では多くのファンがCDプレーヤーをもっていないにも関わらず、レコード会社は『宝くじスタイル』のマーケティング戦略とグッズを伴ったパッケージCDを導入する」と指摘した。 だが、こうした過熱気味のマーケティング手法は長続きはしないようだ。事実、一部K-POPアイドルグループのファンからは「ファンミーティングに行くために20枚以上アルバムを買うことも多いけど、最近は大変です」という声が聞こえている。 サークルチャートのキム·ジヌ首席研究員は、「昨年アイドル初年度販売量競争がどの年より激しかった」と語る。「ライバル歌手の販売量に追いついたり、前作の販売量を超えなければならないという事務所とファンの強迫観念が『押し出し』あるいは『無限ファンミーティング』のような市場の過熱を招いた。そのバブルが今年一部はじけて現れた結果だ」と分析した。 ある大手音楽事務所の関係者も「音楽的に(クオリティが)落ちたとかいう意味ではないが、アルバムのインフレがもうピークを過ぎたという話はたくさん耳にした」として「ファンも音楽関連コンテンツを消費するとき、アルバムだけに『オールイン』しない。オンラインコンテンツ、グッズ、ライブなど、さまざまなスタイルの消費をするということだ」と話した。