10代で大麻を使うと「精神病」リスクが11倍増加、“安全説”を否定する研究結果
大麻とは?
編集部: 今回の研究テーマになった大麻について教えてください。 郷先生: 大麻は、古くから繊維を利用する目的などで栽培、利用されてきた植物です。しかし問題なのは、大麻には「THC(テトラヒドロカンナビノール)」という、脳に作用する成分が含まれています。大麻を使用すると酩酊感、陶酔感、幻覚作用などがもたらされ、依存性も出てきます。 日本では大麻取締法によって厳しく規制されており、無免許の栽培や所持などは禁止されています。大麻をめぐっては、2023年に改正大麻取締法が可決・成立したことが大きなニュースとして取り扱われました。海外では、難治性のてんかんの治療目的などで使用されている大麻由来成分を含む医薬品が、日本では従来の大麻取締法で使用が禁じられていたことから、患者などからは解禁を求める声があり、法改正が進みました。改正された法律では、大麻草を原料にした医薬品の使用を認めるほか、医薬品などの原料として大麻草を採取する目的でも認められています。一方で、乱用を防ぐために、麻薬及び向精神薬取締法で取り締まる麻薬に位置付けられました。すでに禁止されている大麻の所持や譲渡などに加えて、使用の禁止も法律に盛り込まれました。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: カナダのトロント大学らの研究グループによる発表への受け止めを教えてください。 郷先生: 「大麻の使用は依存性もなく安全」というデマが出回っていますが、それを明確に否定する研究はいくつもあり、今回の研究もその一部として捉えることができます。大麻にかかわらず多くの中枢神経作動性の物質は、依存性を形成するとともに脳の活動に異常をきたすことが多いのが事実です。そして、一時期の使用で一生残る障害となる可能性も孕んでいます。特に若年者は大麻に含まれる成分を摂取しないように気をつける必要があります。
編集部まとめ
カナダのトロント大学らの研究グループは「大麻を使用している10代の若者は、使用していない10代の若者と比べて、精神疾患を発症するリスクが約11倍高いことが推定される」と発表しました。日本で大麻によって検挙される年齢層は、20歳代が最も多く、次いで20歳未満となっています。今回の研究のようなリスクをしっかりと伝えることも、若年層の大麻不正使用を防ぐ1つの方法と言えそうです。
【この記事の監修医師】
郷 正憲 先生(徳島赤十字病院) 徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。