「虎に翼」が好評の小林涼子に聞く、自分らしいキャリアの耕し方。
―以前、アグリコの取材をした時に、「みんなのお父さんになる」と発言されていたことを思い出します。涼子さんの現在地と久保田役は重なりますか?
そうなんですよ! いざ演じてみると、「これ、起業家としての私っぽいな」と思う瞬間がいっぱいあったりして(笑)。そういう意味では、本当にスタッフの皆さんは俳優のことをよく見ていますよね! 私自身、自分でこういうキャラだとは思っていませんでしたが、会社でも一緒に働いている社員を守らなきゃ!みたいな気持ちは当然あるし、自分が負けちゃいかんという気持ちもあります。女性が増えてきたとはいえ、起業家の世界もまだ男性社会で、私もそこでいま開拓中ですから、久保田と通ずるところはあるだろうと、一生懸命共通点を見つけていきました。
―4月からJ-WAVEの日曜朝の新番組「EARLY GLORY」のナビゲーターも務めています。俳優、ラジオパーソナリティ、起業家とご多忙だと思いますが、3つのキャリアを掛け持ちするコツはありますか?
うーん、なんでしょうね。24時間しかない1日を、2つないし3つの仕事にわけていくと、寝る時間を削らないと成立しないことは結構あって、大変だなと思う瞬間ももちろんあります。コツは特にないのですが、ともかく"流される"ようにしています。踏ん張ってがんばりすぎてしまう人ほど持続可能でなくなってしまうところがあると感じているので、とりあえず流されていくことはとても大切。だから適度に、でいいんです(笑)。 J-WAVEでも最初、先輩ナビゲーターさんにあいさつ回りをしましたが、みんな「楽しんで~!」って言ってくれるんですよ。サッシャさんもDJ TAROさんもLiLiCoさんも、みんな「がんばって!」でなく、「楽しんで!」って。ナビゲーターを長く経験すると、うまくいく時といかない時ときっと両方あって、だからこそ皆さんそう言ってくださるのかな、と。私も「楽しみます!」と言えるようになりたいです。
―そういう考え方をされるようになったきっかけは、やはり農業と出合ってからでしょうか? 涼子さんの人生のターニングポイントになっている気がします。
そうですね。私は20代前半、疲れてしまった時、父の友人の新潟の棚田に連れていってもらって米作りを手伝い始めましたが、そこから農業で起業することになるなんて想像もしていなかった。 いま、その棚田の横の耕作放棄地でアスパラガスを育てています。一昨年土作りをして、去年が植え付けで、今年初めてアスパラの芽がニョキニョキ出てきて、めちゃくちゃうれしかった! アスパラの株は約10年持つので、10年耐えうる土を作らなきゃいけないんです。今日の今日できることじゃない。 一方で、人は「今日植えたら今日芽を出したい」と焦りがち。でも根が張らないと上には伸びないということは、農業を通してだんだん理解するようになりました。しかも、芽が出てもまだ成功じゃない。これからおいしくならないといけないから。そう思うと道のりは長~~い!って思います(笑)。願わくば、私もおいしいアスパラになれるようにしっかり根を張りたいです。