メジャーリーグで1年目から活躍したヤクルト・青木宣親。功を奏したのは通訳にお願いしたある事だった
2012年にアメリカに行った時、初めは5番手の外野手という状況でした。周りはもう、煌めく才能の集まりです。「誰かが自分の才能を見抜いてくれれば」なんて悠長に構えていたらクビになってしまう。最初のキャンプ中、メジャーリーグってどんな組織で成り立っているのか、このチームはどんな形で動いていてどんな特色があるのか、考えたことがあったんです。 向こうはまずジェネラル・マネージャー(GM)がいて編成の全てを握っていて、その下に監督がいる。監督は現場の指揮官で、その下にいるコーチは日本の感覚に比べてあくまでサポート役という感覚なんです。当時のブルワーズは特に、GMは現場には一切口を出さずに、起用は監督に全権があるという力関係でした。 ● 指揮官は何を考えて 何を選手に求めているのか 指揮官の考えを体現できる選手になれれば、試合に出る可能性は高まっていく。そう思った僕は、そのロン・レニキー監督がどういう野球観を持っていて、どのような選手を求めているのか知ろうと思いました。監督はほぼ毎日、ミーティングをしていたのですが、僕は通訳に、監督のミーティングは必ず一言一句全部訳して教えてくれ、と頼みました。 監督の話を漏らさず聞いて、英字の現地新聞にも毎日必ず目を通していました。そうしていると、レニキー監督が細かいことを凄く大切にする野球観の持ち主であることが分かってきました。バントやエンドラン、サインプレーについても確実性というものを求めていた。 日本人選手は得意分野ですよね。ヤクルト時代はバントをする機会も少なかったですが、大学時代はそういう細かいことを求められていたし、しっかりと学んでもいた。 しかも、他の選手はミーティングも大して聞いていないんですよ。ホームラン打てばいいんでしょ、みたいな感じでね(笑)。その時のメンバーは結構適当で、バントは下手くそだし、サインも無視する。これはレギュラーになれるかもしれない、と思いました(笑)。 青木は細かいことをきちんとやれる、確実性のあるプレーができる――。最初に目をつけてもらったのは、そこだったと思います。それでチャンスを掴んでメジャーで6年もできた。振り返るとあの時、ミーティングというのは1つの大きなきっかけだったと思います。