「科学成果しっかり地球に」諏訪さんと米田さん、宇宙飛行士正式認定
「無重力、想像と違った」訓練の苦楽を振り返る
基礎訓練を振り返り、印象的なものとして諏訪さんは、飛行機の飛行の工夫で短時間、機内に無重力状態を作って体験する「パラボリックフライト(放物線飛行)」を挙げた。「ISSで飛行士がふわふわ浮いている映像を見て想像するのと、実際に体験するのとは結構違い、本当に不思議な感覚だった。飛行機の天井に腹を向けて、無重力のときにぐるっと回る動きをした時、天井が急に床になった感覚があり、非常に面白かった。ISSではこれがずっと続いているのだと、想像力をかき立てられた」
米田さんは、宇宙船内の急減圧を想定した訓練を語った。「急減圧による低酸素症は、苦しく感じないまま認識能力や色覚がだんだん落ち、意識を失ってしまうことがあるが、これは知らないと気づけないと感じた。座学で聞くだけでなく自分の体で感覚を知っておけば、すぐ対応できる。実際に訓練でき、興味深かった」という。
一方、諏訪さんが困難を感じたのは、飛行機操縦に関する訓練。「交信と操縦のどちらがおろそかになっても駄目で、まさにマルチタスクだった」。米田さんはロボットアームで、「限られた台数のカメラを操作し、アームの動きが捉えやすいカメラを認識するのに時間がかかった。ISSは90分で地球を1周するので、明暗(昼夜)が45分で繰り返される。そのため見やすい時も見にくい時もあり、難しかった」と語った。
2人は一緒に訓練を受け続けた。諏訪さんは米田さんについて「理解が早い。座学でも私とは違った観点の質問が多く、経歴が違うので非常に興味深かった」と、米田さんは諏訪さんを「緊急対応の訓練でどんなケースでも落ち着いていて、救われた。人が集まると場が温まり、笑いが起きるような側面も持ち、コミュニケーション能力をたくさん学んだ」と、互いをたたえ合った。
「米国人以外で初」日本人が月面へ
2人が将来の活躍を期待されている重要な舞台は、アルテミス計画だ。米国がISSに続く、大規模な国際宇宙探査として主導。1972年のアポロ17号以来となる有人月面着陸を目指す。月上空の基地「ゲートウェー」を建設して実験や観測を行い、将来の火星探査も視野に技術実証を進める。日本は2019年に参加を決定しており、欧州やカナダも加わっている。