新型出生前診断スタートから1年 「命の選択」をどう捉えるか
―――「新型出生前診断」が始まって間もなく1年。改めて感じられていることはありますか? 昨年末に、出生前診断により重症の骨系統疾患が見つかり、葛藤の末に中絶をするというイタリアの小説『誰も知らないわたしたちのこと』(シモーナ・スパラコ著)の医療監修をしました。私がこの胎児骨系統疾患という特殊な病気の専門だったためです。ここには、これまでタブーとされていた妊娠中期・後期の人工死産に関して、リアルに描写されています。また、中絶後の女性の精神的混乱や悔悟については、私の想像をはるかに超えたものでした。 「新型出生前診断」でもこのような問題が起き始めているということを知っていただくためにも、ぜひ読んでいただきたいと思っています。最後になりますが、私は宮城こども病院の産科で、お腹の中にいる赤ちゃんの診断と治療を専門としています。何十年後、私なのか、後に続く医師なのかはわかりませんが、出生前診断で見つかった胎児の疾患を治療できるようになる日が必ず来る、それを見届けたいと思っています。 ※ここに書かれている内容は、室月淳氏の個人的な見解であり、NIPTコンソーシアムの見解ではありません。 ■室月淳(むろつき・じゅん) 東北大学大学院教授と宮城県立こども病院産科部長を兼任。超音波断層装置や遺伝子検査などを駆使した胎児診断、胎児鏡下手術や子宮内シャント術などの積極的な胎児治療が専門。また、東北大工学部との共同研究である位相差トラッキング法の臨床応用や胎児骨系統疾患の診断と管理、マイクロアレイ法を用いた胎児診断などのテーマに取り組んでいる。NIPTコンソーシアムメンバー
※「NIPTコンソーシアム」: NIPTを国内で施行するに当たり、適切な遺伝カウンセリング体制に基づいて検査実施するための、遺伝学的出生前診断に精通した専門家(産婦人科、小児科、遺伝カウンセラー)の自主的組織