ロータリー復活への秘策 “夢のエンジン”が抱える大きな課題
「HCCI」が救世主に?
さて、ここまで書いてきたことを念頭に置くと、ロータリーの最大の問題はその理想から離れた燃焼室形状にかなりの部分があることが分かる。しかしこれは構造的には解決できない。だったら燃焼の仕組みそのものを変えたらどうだろう? 混合気が端から燃えるのではなく一気に燃やせる技術があるではないか。それは「HCCI」だ。 HCCIとは予混合圧縮着火のことで、混合気をどんどん圧縮してくと、温度上昇によって燃料に勝手に火がつく方式だ。これだと燃え広がるも何も、混合気はほぼ全部同時に燃えるから、HCとCOの問題が解決してガソリンを有効に燃やせる。排ガスがキレイになって、燃費が良くなり、しかもパワーが出る。ロータリーエンジンの課題のかなりの部分を吹き飛ばしてしまう可能性がある。しかもマツダは現在、世界でも最も熱心にHCCIに取り組んでいるメーカーなのだ。 と、ここまで書いて友人と飯を食いに出かけ「ロータリーにHCCIを取り入れたらスゴイことになりそうなことに気がついたよ」と説明したら、彼が言うのだ。「それどっかで読んだな」。驚いて調べてみると、どうやら元マツダのエンジニアで、かつてミラーサイクルを国内で初めて開発した畑村耕一氏が、雑誌「モーターファン・イラストレーテッド Vol.19」の中で近未来フィクション記事として書いているらしい。ちょっとがっかりしつつも、プロのエンジン設計者が言うのであれば、目の付け所としてそう間違っていないこともわかって少し安心した。 後編ではそのHCCIロータリーについて書いてみる。余談だが畑村氏の記事が掲載されている号はすでに絶版で、アマゾンで調べてみたらプレミアが付いていた。さっきポチッとしたので、夕方には届く。筆者の考えが間違っていないかどうか、畑村氏の記事で確認して後編を書きたいと思う。 (池田直渡・モータージャーナル)