ロータリー復活への秘策 “夢のエンジン”が抱える大きな課題
ローターは厚みの大部分がエキセントリックシャフトの偏心部分(つまりクランクジャーナル相当)と摺動(しゅうどう)する構造、になっているが、写真の方を見ると分かる通り、ローター内側の手前にはリングギヤが取り付けられていて、まゆ型ハウジングに固定されたピニオンギヤと噛み合っている。このピニオンギヤは一見エキセントリックシャフトの軸に取り付けられて一緒に回転するように見えるが、ハウジングに固定で動かない。ついでに言うとローター側のリングギヤと中心のピニオンギヤの比率は3:2になっている。 ここで理解しておいて欲しいのはローターはピニオンギヤを回しているのではなく、あくまでもエキセントリックシャフトを回しているということ。それだけ分かっていればOKだ。ギヤは頂点の位相位置がズレないためのガイドの役割をしているのだが、まあそれはピンと来なくても仕組みは分かる。
さて再び図に戻る。一番左はローターが回転して混合気を吸い込んでいるところだ。ローターの角が吸気口を通り過ぎることで吸気口が開く。レシプロエンジンでは弁が取り付けられているが、ロータリーではローターそのものが弁の役割を果たす。 それは次の図で圧縮行程になる。青い面積(実際は厚みがあるので体積)が減っているのが分かるだろう。ハウジングの右側には点火プラグが2本取り付けられていて、体積が最小になる、つまりレシプロエンジンで言う圧縮上死点の直前で火を着ける。ローターは慣性で移動しながら燃焼圧力を受けて、エキセントリックシャフトに時計回りの回転力を与える。 これはフラフープで言えば、回し始めに手で勢いをつけてやるのと同じこと。ついでに言えばフラフープでは輪っかがローター、体がエキセントリックシャフトにあたる。腰を360度周方向に振っている時の体の中心とのズレが偏心量だ。そして決定的に違うのは、フラフープではエキセントリックシャフトがローターを回しているが、ロータリーエンジンではローターがエキセントリックシャフトを回している点だ。重たい輪っかが体の回りを回った結果、腰の方が振り回されている状態なのだ。 さて、話は作動サイクルに戻る。燃焼の後は、吸気の時と同様、ローターの回転によってローターで塞がれていた排気口が開き、燃焼済みのガスが排気される。 これらの行程は、ローターの三辺全てでそれぞれ行われているので、図の点火・燃焼行程では、次の辺では同時に吸気が行われている。流れ作業の様に次々と行程を進めていくのだ。