ロシアが欧州へ「移民」「難民」を大量に送り込んでいる! 日本人記者が国境地点で見た「異様な光景」
突然ビザを持たない若い男性たちが……
橋に突然、ビザを持たないイラク人やソマリア人ら若い男性数人が現れたのは昨年10月のことだった。「エストニアに住みたい」などと叫び、難民申請を訴え出た彼らの脇には、ロシア連邦保安局(FSB)に所属する国境警備隊員が緑色の制服姿で付き添っていた。 「FSBが手ほどきをして、集団にときおり指示を出していました。われわれがどう反応するかを探っていたのでしょう」 その後も数回、同様の試みが続いた。ロシア側が撮影機材を設置した直後に集団が現れたこともあったという。 「FSBが関与している以上、国家的脅威です。厳しく対処せざるを得ません」 エストニア側が入国を拒み続けていると「攻撃」はやんだが、今年5月にはエストニア側が川に設置した境界を示すブイ50個の半分をロシア側が一方的に撤去するなど、国境をめぐる神経戦は続いている。
ピラミッド形ブロックが並ぶ異様な光景
この「竜の歯」を私は2日前にも隣国ラトビアで目にしていた。 ロシアとの国境検問所のある東部テレホバへレンタカーで向かっていた私は、幹線道路脇の空き地に小さな白いピラミッド形のブロック数百個が並ぶ異様な光景に出くわした。 ラトビア、エストニア、リトアニアのバルト3国の国防相は今年1月、軍事侵攻に備えてロシアとベラルーシの国境沿いに防衛施設を配置する「バルト防衛ライン」を設けることで合意した。これを受けてラトビア政府は3月、5年間で約3億ユーロ(約480億円)を投じて対戦車塹壕や地雷、軍用倉庫を整備する計画を決めており、ラトビア公共放送によると塹壕の掘削工事がテレホバで始まっていた。いずれ「竜の歯」も敷設されるという。 リトアニアも、国境沿いにフェンスを建設し、検問所6カ所のうち4カ所を閉鎖するなど人の往来に警戒を強める。リトアニア軍は今年4月、「スバウキ回廊」と呼ばれる南部地域の防衛を想定した軍事演習をポーランド軍、米軍とともに実施した。
中東やアフリカ出身の青年が自転車で……
7月10日、私はエストニアの首都タリンからフェリーでバルト海を渡り、フィンランドの首都ヘルシンキに入った。「世界一幸福」といわれる国は、「人権法違反」の批判に揺れていた。その引き金もやはり、ロシアが送り込んだ移民・難民集団の出現だった。 ロシア第二の都市サンクトペテルブルクまで約200キロ、フィンランド東部の街イマトラ。国境警備隊曹長ビレ・クーシスト(40)は閉鎖された検問所を背に、「ロシアが不法移民問題を持ち込んできました」と切り出した。 「フィンランドにやって来たソマリア人やシリア人、イエメン人など、ほぼ全員がロシアに合法的に滞在するビザを持っていました。ポーランドで押し返されて、ここまで連れて来られた人もいました」 フィンランドはウクライナ侵攻後に中立政策を転換し、昨年4月に北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。すると8月、ロシア側から突然、中東やアフリカ出身の青年らの集団が難民申請のため、自転車に乗って検問所に現れるようになったのだという。 「徒歩での越境は違法なので、彼らはみな自転車を与えられていました」 フィンランド政府はこれを「移民を道具に使ったハイブリッド攻撃」と位置付け、11月末までにロシアとの国境検問所8カ所すべてを閉鎖した。1300人を超えた流入は止まったが、政府は有事に備えて国境へのフェンス設置を進め、検問所は無期限に閉鎖した。