ロシアが欧州へ「移民」「難民」を大量に送り込んでいる! 日本人記者が国境地点で見た「異様な光景」
「組織化された密入国システムが」
しかし今、再び移民・難民排斥の動きが高まりつつある。きっかけは、若い兵士の死だった。 ポーランド国境警備隊によると、密入国の試みは雪解けとともに今年4月から急増し、上半期だけで2万件を超えた。出身国はイラクやアフガニスタン、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国など約40カ国に上る。その様子を地区報道官カタジュナ・ズダノビッチは次のように語る。 「ベラルーシから送り込まれる人たちは一層攻撃的になっており、石や枝、割れたガラスを投げてくるなど極めて危険な状況です」 そんななかでの出来事だった。5月28日、約50人の集団越境を阻止しようとしたポーランド軍の兵士(21)がフェンス越しに刃物で胸を刺されて死亡する事件が起きたのだ。政府はすぐに立ち入り禁止区域を復活させ、反移民を掲げる地元青年らも自警団をつくってパトロールを始めた。 また、かつては密入国者の多くが「ベラルーシ発」だったが、今や大半が「ロシア発」だという。カタジュナは続ける。 「ほとんどが留学や観光、就労といった合法的なロシアのビザを所持しており、モスクワからベラルーシに連れて来られて密入国地点を指示されています。組織化された密入国システムが出来上がっています」 森で人命救助に当たるボランティアたちも逆風にさらされている。
「ロシアにはお金さえ払えばビザを手配してくれる大学が」
ベラルーシとの国境近くに拠点を構え、移民・難民たちを支援する団体「ベズクレス財団」の理事マリアンナ(43)=仮名=がため息交じりに語る。 「今や状況は一変しました。社会からの支えが目に見えて減り、資金集めはもはや困難です。SNSには支援者の殺害を呼びかける身の毛もよだつような投稿まであります」 そこにはウクライナ侵攻も大きく影響している。 「私が会ったアルジェリア人一家はロシアで暮らしていましたが、ロシア軍の召集令状を受けて慌てて逃げ出してきました」 支援団体のもとで難民申請の結果を待つアフガニスタン人女性ヒラ(18)=仮名=も、ロシアから来ていた。彼女の証言は「密入国システム」の一端を示すものだった。 「ロシアにはお金さえ払えばビザを手配してくれる大学がたくさんあって、大勢のアフガン人が学生ビザで来ていました」 実母が病死し、イスラム主義組織タリバン政権下で学校に通うこともできなくなった彼女は21年、義父に借金の形として身売りに出された。すきを見て逃げ出し、ロシア大使館で学生ビザを取ってモスクワに逃れた。