【メディア初潜入】新幹線の“健康診断”に密着! 福井・敦賀車両基地でミリ単位の異常も見逃さない検査の全貌
作業員を守る“命鍵”
架線には2万5000ボルトの高圧電流が流れており、これを取り込むことで新幹線の動力源としている。高圧電流が流れる架線に近づくと、触れずとも感電死するリスクがある。検査員の安全を守るため、屋根上検査の前には、必ず車両への電気の供給を止める。 安全対策はほかにも。その一つが「命鍵(いのちかぎ)」だ。屋根上につながる階段前には扉があり、通常は鍵がかかっている。扉にささる命鍵は10本。命鍵を抜くと扉が開くが、同時に架線に流れる電気もストップする。 さらに、鍵を抜いた状態では、間違えて架線への通電ボタンを押しても電気が流れないようになっている。こうすることで作業者の命を守る役割をしているのだ。 扉を抜けて、屋根上検査へ。先ほどまで2万5000ボルトの電流が通っていた架線にフックをかけ、検査を始めた。パンタグラフは架線と接しており、走行に伴いすり減るため、既定の厚さを保っているかチェックする。 使うのはコの字型の計測器。厚さが22ミリを下回った場合、新品と交換する。 新幹線の高さは約3.6メートル。局面になっていて滑りやすいが、1車両2分程度で検査を進める。命鍵をしっかり閉めて、終了だ。 最後は車両の中に入り、「客室内」の検査。ここでも40項目近くを、歩きながら素早くチェックしていく。空調の温度を体感で確認。座席の枕の設置状況や車内の案内表示器に傷がないかもチェックしている。 トイレや洗面台などの水回りなども確認する。客室内では清掃作業が同時に進行することもあり、作業の邪魔にならない配慮が必要だという。 こうしてすべての検査が終了した。検査後、矢野さんは「お客様が定刻通り目的地にたどり着けるよう全検査、全力で取り組んでいます。ぜひ安心して乗っていただきたい」と話す。 1973(昭和48)年に国の整備計画が決定してから半世紀あまり、ようやく福井まで新幹線が延伸した。当面の終着駅・敦賀にある車両基地では、ミリ単位の異常を見つけ出す検査員が安全な運行を支えている。
福井テレビ