薬剤師の業務負担を軽減し、患者さんによりよい医療を届ける…“薬局のDX”に取り組む株式会社カケハシの大きな挑戦とは?
笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月13日(土)の放送は、株式会社カケハシ代表取締役社長の中尾豊(なかお・ゆたか)さんをゲストに迎え、お届けしました。
医療従事者の家系で生まれ育った中尾さんは、武田薬品工業株式会社に入社し、MR(医療情報担当者)として活動した後、2016年3月に株式会社カケハシを創業。その後、内閣府主催の未来投資会議 産官協議会「次世代ヘルスケア」、厚生労働省「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」に有識者として招へい。2022年から東京薬科大学 薬学部 客員准教授、2023年からは新潟薬科大学 客員准教授もつとめています。
◆薬剤師が「今日はどうしましたか?」と聞く理由
株式会社カケハシは薬局のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援し、より良い医療の実現を目指しています。まずは創業の経緯を聞いてみると、「患者さんが自宅に帰って薬を飲むときに、特に副作用のある薬や服用の仕方が難しい薬だと、1人で服用を続けることに何かしらの不安があると思うんです。そうしたとき“誰かに相談したい”という心理的不安を支えてあげる体制が必要になると思ったんですね。患者さんの病気や薬に合わせて、医療従事者が適切なタイミングでサポートできる、患者さんと医療従事者をデジタルでつなげる、その“架け橋”になれたらと思い、創業しました」と中尾さんは言います。 そもそも薬剤師の業務量は膨大で、「まず“薬を間違えずに調剤する”というのも当然ありますが、薬の飲み合わせを確認したり、ほかの医療機関でもらっている薬はないかチェックしたりなど、いろいろな業務があります」と説明。 さらに、薬剤師は医師からの処方箋をもとに薬を調合していますが、その処方箋には、患者さんの病名までは記載されていません。「薬によっては“この病気には処方してもいいけど、この病気には使ってはいけない”というものもあります。だから、病名がわからないと正しい判断をすることが難しいんです。薬局に行くと薬剤師さんに『今日はどうされましたか?』と聞かれると思うんですが、それは(病気に関する)情報がないためで、安全性を守るために丁寧なコミュニケーションをおこなっているんです」と解説します。