AIが奪うメディアのコンテンツ、その収益を「取り戻す」スタートアップ
メディア企業が、コンテンツをスクレイピング(収集)する人工知能(AI)ボットへの対応に苦慮する中、パブリッシャーとAI企業との間のライセンス契約を仲介する複数のスタートアップが台頭している。本記事では、フォーブスがすでに交渉を行っている数社を含む、この分野の注目企業を取り上げる。 パブリッシャーたちは、自社のコンテンツをスクレイピングして大規模言語モデル(LLM)の訓練に使用するAIスタートアップへの対応に苦慮しているが、この場合、パブリッシャーが取れる選択肢は2つある。AI企業を著作権侵害で訴えるか、アーカイブをライセンスするための契約を結ぶかだ。 そんな中、AIにコンテンツを利用されたパブリッシャーが、失われたページビューの代償を得られるようにするスタートアップが現れた。 そのうちの1社のTollBit(トールビット)は、ある種の「デジタル料金所」として機能し、AI企業がパブリッシャーのコンテンツをスクレイピングするたびに料金を請求している。また、ProrataAI(プロレート)は、AIが生成したコンテンツの中に含まれるパブリッシャーのコンテンツの割合を導き出して、それに基づく補償を行う技術を開発している。さらに、ScalePost(スケールポスト)は、AI企業が対価を支払ってアクセスするための、ライセンス済みコンテンツのライブラリを構築している。 OpenAIやAnthropic(アンソロピック)、Perplexity(パープレクシティ)といったAI分野の大手は、著作権で保護されたコンテンツをスクレイピングし、再利用していることが知られている。 これを受け、ニューヨーク・タイムズ(NYT)やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の発行元であるダウ・ジョーンズのようなメディア企業は、AI企業を相手取る訴訟を起こす事態となっている。一方で、争うのではなく提携を選んだメディア企業もいる。 ■すでに始まっている「収益化」 例えば、OpenAIはピープル誌の発行元のドッド・ダッシュ・メレディス社に、年間少なくとも1600万ドル(約25億円)を支払ってコンテンツのライセンス提供を受けている。また、ロイター通信の運営元のトムソン・ロイターは、AI企業とのライセンス契約からの累計収益が3300万ドル(約52億円)に達したと11月の四半期決算で述べていた。 しかし、パブリッシャーは、AI検索エンジンの人気が高まるにつれて、収益を生むトラフィックが自社のサイトからますます離れていくことを懸念している。 「当社のようなパブリッシャーが苦境に立たされていることは明らかだ。私たちは、自社のコンテンツにふさわしい価値を見出す機会を探していた」と、タイム誌のブルハン・ハミッドCTOはフォーブスに語った。タイム誌は、Adweek(アドウィーク)やハーストコーポレーションを含む約400社と並んでTollBitのプラットフォームを利用している企業のうちの1社だ。